こんなに厳しい!三国志の時代の宴会のマナーが超複雑

2016年7月25日


 

劉備 食客

 

中国人は、もてなしが好きで、客が来ると毎日宴会漬けというのも、

珍しくはないですが、そこは礼の国だけあり、宴会マナーにはうるさいです。

このマナーは、第一には招待してくれた主催者に恥をかかせない事、

そして、第二には来客に恥をかかせない事でした。

宴会マナーのルールブックは礼記(らいき)の曲礼(きょくれい)という

書物にありますが、今回は、その内容をご紹介しましょう。

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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食べないなら、出来るだけ後ろに座り、飲み食いするなら食案にくっつけ

三国志 英雄たちの宴

 

これは食事をしないなら、部屋のはしっこに座って、年長者や上役が

部屋の中で動きやすいように配慮しなさいという意味です。

そして食事をする時には、できるだけ食案(食卓)にくっつき、

食べ物を落とす事がないように気をつかいなさいと言っています。

 

また、当時の料理は、今のような回るテーブルではなく、

来客一人一人に、お膳で出されていました。

少し前の日本の宴会に近い感じなんですね。

 



食事が運ばれたら起立、目上の人が入ってきても起立で迎える。

徐庶と出会う劉備

 

宴会が始まり、メインになる料理が運ばれると、

客は起立して、敬意を示さないといけませんでした。

 

三国志の時代、椅子とテーブルはまだ普及していないので

客は筵(むしろ)を敷いた、床の上に座っていましたから、

何度も立ったり座ったりは、結構面倒臭いです。

また、目上の人がやってきても、一同は起立して尊敬の意を表します。

気がつかないでガツガツ食べると軽蔑される羽目になります。

 

 

食事を目上の人に譲られたら、食後に唾を吐いてはいけない

陳平
もし、目上の人に食事を勧められたら、それを食べた後で、

唾を吐いてはいけません。

これは、勧められた食事が不味いと誤解される事を防ぐ為です。

 

 

食事を並べ終わったら、まず食事が出来る事を感謝する祭を行う

張良㈭ 広武山決戦編02 劉邦

 

ここは、今とはだいぶ違いますが、当時は宴会の食事を並べ終わると、

主催者が客に、「食の祭を行うように」と促しました。

食の祭とは、食べ物を開発してくれた先祖に感謝して、食べ物や酒を

先祖に捧げる儀式の事を意味しています。

やりかたは、並べられた料理を食べる順番に少しずつ取って小皿に並べ、

祈りをささげ、酒は床に置いて、同じように祈ります。

 

なんだか面倒くさいですが、飢餓が隣り合わせだった時代、

宴会でお腹いっぱい食べられるというだけで、それは神に感謝すべき

素晴らしい事だったのです。

 

肉や魚を勝手に食べてはいけない、まずは飯を三杯食べてから・・

 

呂布と劉備

 

さて、食の祭も終わり、やっと肉や魚を食べられるかと思いきや、

まだ駄目だったのです。

すでに美味しそうな料理は目の前に並べられていますが、

これは勝手に客の判断で食べてはいけません。

 

料理を食べる前に客は、小さなお椀でご飯を三杯食べる習わしでした。

ご飯を三杯食べると客は「もうご馳走様です」と主人に言います。

 

すると主人は「どうして、どうして、まだ、肉も魚もあります。

遠慮なさらず食べて行って下さい」と客に促します。

 

そこでようやく、客は、肉や魚の料理を食べる事が出来ます。

こちらも七面倒な手順ですが、これも主人は客人が飽きる程に

食事を振る舞ってくれるという尊敬の表現なのです。

 

食事が終わったら客は食器を整理して下僕に引き渡す

宦官集合 

 

さて、宴会で食べるモノを食べたら、お土産もらって帰宅・・

かと思えば、当時の宴会ではそうはなりませんでした。

 

食べた食器は、それぞれ客人が綺麗に片づける習慣だったのです。

しかし、その食器を台所まで持っていく必要はありません。

ちゃんと主人が「客人が手を触れる事はありません」と言い、

下僕を呼んで片づけさせるからです。

 

こちらも、宴会の後片付けをする主人に対して、

食事の礼として片づけを手伝うというマナーが現れています。

 

現代にも通じる 宴会でのタブー編・・

宴会マナー 酒

 

次には、三国志の時代の食事のタブーについていくつか拾ってみましょう。

こちらは、現代にも通じるものも多く面白いですよ。

 

・食べすぎたら駄目・・人と一緒に食事をして食べ過ぎるのは

慎みがなく恥ずかしい事だ。

 

・飯は少しずつ口に入れよ・・大口をあけてご飯をかきこむと、

どうしても大食い大会になるので、少しずつ食べる事。

 

・取った食べ物を戻すな・・一度取った食べ物は皿に戻してはいけない

いかにも不衛生であり見た目が悪い。

 

・ガツガツ食べてはいけない・・胃袋に流し込むように食事をするな

まるで、食べるものがない飢えた人が食事をしているようで恥ずかしい。

 

・くちゃくちゃと音を立てるな・・食べ物を食べるのに、音を立てると、

まるで食事が不味く舌打ちをしているように主人に聞こえる、慎め。

 

・骨をかじってはいけない・・肉類の骨をかじってはいけない。

不愉快な音がして品がないし、肉が満足にないから、骨をかじって

我慢しているように主人に思われる。

 

・骨を犬に食わせてはいけない・・自分で骨をかじるのも駄目だが

犬に与えるのもマナー違反だ、それを見た主人は、自分の出した料理は

犬に食わせる程度のモノだと批判されたと思うだろう。

 

・偏食をするな・・・ いくら好きでも、特定の料理だけを食べてはいけない。

他に参加した人もいるのだから、全員に行き渡るようにバランス良く食べなさい。

 

・ご飯をかき混ぜて冷ますな・・熱いからと言って、ご飯をかき混ぜて

冷ましてはいけない、優雅さに欠けるし、貪っているように見える。

 

・肉のスープは音を立てず、ゆっくり飲み干す・・肉のスープは、

ずるずる音を立てて飲んではいけない。

また、急いで飲むのも卑しい感じがしていけない、ゆっくり飲み干せ。

 

三国志ライターkawausoの独り言

kawauso 三国志

 

上に挙げたタブー以外にも、

「食事を食べる時に溜息をつくな!食事は楽しく!」とか、

「醤油を直接飲んではいけない!」など、

そんな客いるの?と思うようなマナーが礼記の曲礼には記されています。

 

そもそも、中国人は、非常に礼儀に厳しく、

「ネズミでさえ手足があるのに、お前には礼儀もないのか?

どうして、早く死んでしまわない?」

 

という、ドギツイ詩も残されている位でした。

美味しい料理を食べるのも、なかなか大変だったんですねえ・・

 

本日も三国志の話題をご馳走様・・

 

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台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。本当は三国志より幕末が好きというのは公然のヒミツ。三国志は正史から入ったので、実は演義を書く方がずっと神経を使う天邪鬼。

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