社会人の皆さん、日々のお勤めご苦労様です。毎日毎日働いて働いて、自分の人生は一体何なんだろうと思ってしまうときもあるかもしれません。しかし、皆さんが働いていることには間違いなく意味があります。その意味が明文化されており、あなたを時に励まし、時に戒めてくれる書物こそが孔子とその弟子たちの名言集『論語』です。
悩んでいるときにこそ『論語』を読んでほしいものです。今回は『論語』を読むと仕事をする上でなぜ役に立つのか、どのように役に立つのかについて解説していきたいと思います。
前向きに努力する心を育む言葉がある
『論語』には人を前向きにする力があります。おそらくそれは、『論語』の言葉を通して孔子が常に前向きに理想の君主を探し続けたパワーがヒシヒシと伝わってくるからでしょう。たとえば、今の自分の立場について不満がある人には次のような言葉がおすすめです。
「位無きことを患えず、立つ所以を患う。
己れを知ること莫きを患えず、
知らるべきことを為すを求む。」
これは里仁篇に見える孔子の言葉です。今、自分の地位が低いということをくよくよ考える暇があったら、どうすれば地位を得られるかを考えた方が得策だ。今、自分を認める者がいないことをくよくよ悩む暇があるならば、今すぐに人に認められるための努力をはじめるべきだ。意味を補いながら訳すならばこんなところでしょう。現状についてうだうだ悩んだりぐちぐち言ったりしてないで、これからのことを考えて行動を起こせというのは本当に言い得て妙ですよね。
自分を戒めてくれる言葉がある
社会人になってそれなりの年数を重ねると、自分のことを心から想って叱ってくれるような人も少なくなってしまいます。これを「自分が一人前の大人になったから」と考える人もいるようですが、それは大変危険な思考です。真に「一人前の大人」であれば自分自身を自分で律することができます。しかし、自分で自分を律するというのは存外難しいものですよね。
そこでおすすめしたいのがやっぱり『論語』。『論語』はあなたを戒める素晴らしい言葉をたくさんもたらしてくれます。たとえば、社会人の皆さんにはこんな言葉がピッタリでしょう。
「速かならんと欲すれば則ち達せず。小利を見れば則ち大事成らず。」
これは子路篇に見える言葉であり、せっかちな弟子・子夏を戒めた孔子の言葉です。はやく成果をあげたいと思えば成功しないし、小さな利益に気をとられていれば大事を成し遂げることはできない。これは子夏に限らず、現代社会で戦う社会人の皆さんの琴線にも触れ得る言葉なのではないでしょうか。
部下としても上司としても大切にしたい言葉がある
『論語』はリーダーのための教科書と言われますが、上司という立場にある人に限らず、部下という立場にある人が大切にしたい心がけについても記されています。たとえば、次のような言葉。
「之れを知るを之れを知ると為し、知らざるを知らずと為せ。是れ知るなり。」
知っていることは知っていると正直に言い、知らないことを知らないと正直に言うということこそが本当に知るということだという意味のこの言葉は、部下として謙虚で誠実な姿勢を保つために欠かせない言葉と言えるでしょう。また、次のような言葉も良き部下になるためのポイントが詰まっているのではないでしょうか。
「学びて思わざれば則ち罔し。思うて学ばざれば則ち殆し。」
学んでもそれを元に考えなければ物事の本当の意味がわからないままだし、考えることがあっても新しく学ぶことが無ければ独断に陥ってしまうために危険である。もちろん、部下だけではなく、上司の立場にある人にもぴったりな言葉はたくさんあります。たとえば、次のような言葉が挙げられるでしょう。
「其の身正しければ、令せざれども行わる。其の身正しからざれば、令すと雖ども従わず。」
自分の行いが正しければ、わざわざ命令しなくとも部下の者たちは正しく動くが、自分の行いが正しくなければ、命令したとしても部下の者たちが従うことはない。上司という立場になったからといってふんぞり返ることなく、常に身を正しくして部下に接したいものですね。
三国志ライターchopsticksの独り言
『論語』といえば中学生くらいの時分に学校で習うもので、社会人になった自分にはあまり関係のないものだと思っている人もいるかもしれません。しかし、『論語』は社会人になった今こそ読んでもらいたい書物です。子供の頃には何も感じられなかったかもしれないその言葉も、大人になって読んでみるとその一言一言が重々しく感じられることでしょう。
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