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【はじさん書評倶楽部】人生の勝算(NewsPicks Book)前田裕二

2017年7月16日


 

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はじめての三国志を書いている中の人はどんな本を読んでいるのか?

そのような、はじ三読者の疑問に応え、良書を紹介しようと造られたこのコーナー

もちろん私達、中の人は、三国志ばかりを読んでいるわけでなく、

あまり公表できないような、ウヒョな本も交えつつ様々な本を読んでます。

今回は、あの秋元康や堀江貴文が絶賛した、前田裕二著、人生の勝算を書評します。

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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忙しい人は、ここを読んで 人生の勝算の要点

 

この本は、新しいショービジネスの可能性を切り開いた本です。

従来のショービジネスは一人の天才アイドルを発掘し事務所が、

それに高い宣伝費を出し、認知度を高めて何百万人というファンを獲得する事で

ようやく利益を出し、ビジネスとして成立します。

 

しかし、このモデルだと数百万人に認知されてやっと成功ですから、

一握りの天才しか成功する事は出来ない事になります。

 

 

一方で前田氏が開拓したモデルは、従来離れていたアイドルとファンの間を

SHOWROOMという双方向型の動画配信サービスで結びつけています。

これまでの一方通行な、アイドルとファンの関係ではないので、

ファンがアイドルを熱心に応援したくなる関係が産まれてくるのです。

 

平たく言えば、会いに行けるアイドルで始まったAKBモデルを、

SHOWROOMというコンテンツで、量産普遍化したという事です。

 

ビジネスモデルとしては、SHOWROOMに登録したアイドルに

視聴者のファンがギフトと呼ばれる課金をして、アイドルは生計を立て、

何百万人のファンがいなくても、数百人程度のコアファンがいれば、

ショービジネス世界でアイドルとして活動できるという事になります。

それだけ、アイドルのハードルが下がり、成功する人が増えるわけで、

まさに革命的なショービジネスモデルの転換です。

 

著者は、どうしてこんなビジネスモデルを考えたのか?

 

著者の前田氏は、産まれて直ぐに父を8歳の時に母を失いました。

10歳年齢の離れた兄と暮らし、その後、親戚の家に預けられましたが、

そこでは馴染む事が出来ず、荒んだ生活をしていたそうです。

ただ、その中で、親戚のお兄ちゃんに買ってもらったYAMAHAのギターを

弾いている時だけが、心の慰みで、やがて、そのギターを持って駅前に出て

小学生の弾き語りをして、お金を稼ぐ事を思いつきました。

 

最初は、自分の作ったオリジナルの歌を歌いましたが、

道行く人は立ち止まる所か距離を置いて通り過ぎるだけでした。

前田少年は、どうして通行人が通り過ぎるだけなんだろう?と考え、

それが、通行人の事情も考えず、自分が歌いたいだけの歌を

歌っている事が原因だと気が付いていきます。

 

お客さんの聴きたい歌を歌う事で風向きが変わった

 

そこで、前田少年は、自分が歌いたい歌ではなく、

通行人が聴きたいであろう歌をリサーチして、覚える事にしました。

そして、ただ、それだけではなく、本日歌う歌をリスト化して紙に書いて、

ギターケースの横に立てかけて見えるようにしたのです。

 

それは、誰だって聴いた事がない歌より、すでに耳にした歌に安心感を持つだろうと

考えたからで、さらに、歌う場所も下町の葛飾区から白金へと移しました。

白金はセレブが多いので、より多くの人がギターケースにお金を投げ入れるだろう

という仮説を立てて、それを実践したわけです。

 

思惑は的中、通行人は足を止めて、前田少年の歌に耳を澄ますようになります。

つまりは、通行人の人々は前田少年に関心がないのではなく、素性が分らない

小学生のギターの流しを警戒し、或いは気味悪がり敬遠していただけでした。

 

さらに前田少年は、通行人の歌のリクエストにも応えるようになります。

こうして、小学生の弾き語りが、演歌、懐メロ、最近の歌まで歌うという

ギャップが大評判になりました。

 

ある女性の為に歌った 白いパラソルで絆の力を知る

 

前田少年は、ある中年女性から松田聖子の白いパラソルのリクエストを受けます。

しかし、知らなかったので、「今は歌えませんが、1週間後にまた来て下さい」と

その女性と約束を交わしました。

 

前田少年は、白いパラソルを覚えて、1週間後に、その女性の前で歌いました。

(自分の為に、1週間の時間で歌を覚えてくれた)この事に女性は少なからず感動し

以来、熱心に歌を聴きにきてくれるファンになったのです。

 

やがて、固定ファンがつくようになった前田少年は、そこで初めて

オリジナル曲を歌いました、別に急に歌が上手くなったわけではありませんが、

前述の女性は感動して、ギターケースに一万円札を置いていきました。

余程の演歌の大御所か外タレでない限り出さない大金をプロでもない少年の為に

出してくれたのです。

 

こうしてファンが付いた前田少年は、ギターの弾き語りを始めてから半年で、

最初は月に500円だったおひねりが十万円まで増えていました。

後に証券マンとして大成功するだけあり、この頃から才能があった

という事なんでしょうね。

 

時間と空間と経験を共有して強固な絆が産まれる

 

前田氏は、これを絆の力だと言います。

パフォーマーとして努力している前田少年と、それを見ている通行人の間に

時間を共有しているという感覚が産まれ、お互いの壁が取り払われて一体化し

その努力を応援してあげよう、一肌脱ごうという感情が産まれるのです。

 

それは、パフォーマーとしての才能を越えた、努力や思いに応える対価なので

一握りの天才だけではなくて、アイドルとして生きていきたい、ファンの人に

喜んでもらいたいという思いを持ち続ける人であれば到達する事が出来るわけです。

 

前田氏は、この絆システムを、スナックの経営に例えています。

同じ水商売でもスナックは、クラブやキャバレーのような同系統の仕事より

ずっとビジネスモデルが立ちやすく収益が上げやすいそうです。

 

なぜなら、大抵、スナックはママの自宅を改装したものですし

従業員はママと家族とあと一人程度、出しているのはお酒と乾き物程度です。

店舗費用や、従業員数、出す料理にもクオリティが求められるクラブや

キャバレーより経費が低いから、少ない収益でも純利益が出るわけです。

 

スナックのママこそ、絆アイドルの典型

 

そして、スナックに集まる常連客は、料理より酒よりママに会いに来ます。

ここでは、ママのキャラクターが最強のコンテンツなのです。

さらに、スナックのママには完璧は求められません、むしろ、ダメなママの方が

俺達が来ないと店が潰れると常連が変な使命感を持って支えてくれるのです。

これも従来の完全無欠なアイドルとは、真反対で、後に前田氏が立ちあげる、

SHOWROOMのアイドル像に繋がるものがあります。

 

絆型のアイドルとは、アイドルとファンが一体化し、お互いがお互いの為に

存在しているという究極のエンタメの形と言えます。

エンタメの原義は「お互いに抱き合う」という意味だそうで、その意味では、

ファンとアイドルが完全に抱き合っている前田氏のショービジネスモデルは、

本当の意味でのエンタティメントなのかも知れません。

 

本はもう少し長いのですが、この部分が分かれば、著者の言いたい事は、

半分以上尽きていると思うので、この辺りで止めます。

気になる人はどうぞ、手に取ってみてください。

 

はじさん書評倶楽部 kawausoの独り言

 

今回の前田裕二さんの著書、人生の勝算の意味は、

「努力すれば、きっと幸せを掴める、具体的な勝算があるわけではないけど

僕はそう信じている」という意味合いから産まれたそうです。

 

幼い頃より父を失い、母を失って暗い少年時代を送った前田氏、

人は産まれついた環境は選べないが努力すれば、運命は変えられる望みは叶う

前田氏は、そのような思いからSHOWROOMを立ちあげています。

 

努力すれば、必ず報われる社会システムを構築できる、

人間は、その才能を与えられているというのが彼の持論です。

 

昨今はシニカルな、冷めた意見がカッコイイとされて、前田氏のような

ど根性は敬遠されがちですが、なかなか読みやすく面白かったです。

kawausoの書評 ☆☆☆☆☆

 

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kawauso

台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。本当は三国志より幕末が好きというのは公然のヒミツ。三国志は正史から入ったので、実は演義を書く方がずっと神経を使う天邪鬼。

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