漫画を描いて投稿した経験がある方は、漫画には大きく分けてギャグマンガに多い一話完結型と長大なストーリーが何十年も続くストーリー漫画の2つのジャンルがある事をご存知でしょう。特にストーリー漫画は人気に火がつくと、それこそ人気がなくなるか、漫画家が執筆を断念するまで何十年も継続しますよね?この漫画家に多大な負担を強いるストーリー漫画という形式はどうやって生まれたのでしょうか?
この記事の目次
週休一日の定着で週刊漫画が誕生
戦後、高度経済成長を迎えた日本では6日働き1日休む週休1日が定着しました。こうしてテレビでもラジオでも一週間サイクルで番組を編成するのが普通になり、出版でも週刊誌が登場してきます。漫画業界でも1959年に少年マガジンと少年サンデーのような週刊少年漫画が登場しました。
割高な週刊少年漫画は売れなかった
しかし、週刊少年漫画は創刊当初はあまり売れませんでした。理由は当時の子どものお小遣いで買うには割高だったからです。また、当時は安価な貸本漫画が全盛を迎えていて、週刊少年漫画が食い込む余地がありませんでした。
ラジオのソープオペラからストーリー漫画が誕生
そこで出版社は考えます。毎週子供たちが漫画の発売を心待ちにするにはどうすればいいか?ここでヒントになったのがラジオのソープオペラでした。ソープオペラは一話完結ではなく、ストーリーが毎週続く形式だったのです。また、少し前に廃れていた紙芝居も、いつもいいところで話が終り客を引っ張る形式でした。こうして出版社は、一話完結が多かった漫画をストーリー漫画に切り替えていくのです。
週刊少年漫画を花形にしたストーリー漫画
ストーリー漫画の手法は当たりました。従来の漫画は一話完結で気軽に笑える形式が多かったのに対し、ストーリー漫画は話を引っ張っていくために、壮大なストーリーと回収に何年もかかるような伏線、読者に衝撃を与えるような悲劇性を繰り返し織り込む事で当時の少年少女の心をつかんだのです。このため、漫画家は1本ストーリー漫画をヒットさせると何年間もそれで食べていけるようになりました。
漫画家に地獄を呼び込んだストーリー漫画
しかし、ストーリー漫画には負の側面もありました。出版社は、ドル箱のヒット漫画を終わらせる事が売り上げに直結するので人気がある限り漫画を続けさせようとします。また、逆にどれほど造り込んだストーリーでも読者の人気がなくなると未完だろうがなんだろうが容赦なく打ち切らせるようになりました。この漫画家本人の意思に関係なく継続させ、あるいは打ち切る形式は漫画家に過重なストレスを加え、体調不良による長期休載や、漫画家の失踪、自殺、過密なスケジュールの中で健康状態が悪化し突然死するような事態を招いたのです。
ストーリー漫画への対策
この漫画家の寿命をすり減らすストーリー漫画連載について漫画家も1人で書かずにアシスタントを何名かおいて分業で一本の漫画を書き上げるなどでストレス軽減を図っているケースが多くあります。このアシスタントの中から新人漫画家がデビューするケースが多い事も皆さんご承知でしょう。しかし人気に左右されるという点で漫画家の立場が不安定である事に違いはありません。私たちを楽しませているストーリー漫画は、こういう過酷な状態から生み出されるものなのです。
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