不老不死という響きにワクワクする人はたくさんいるのではないでしょうか?
誰もが1度は夢見るであろう不老不死。昨今は「不老不死に一歩近づいた!」なんて科学の発展を喜ぶニュースをよく目にしますよね。
実は、中華統一を成し遂げた秦の始皇帝も不老不死に情熱を傾けていた1人。彼は水銀を飲むことによって不老不死を得られると思い込み、かえってその寿命を縮めてしまったと言われています。一体なぜ始皇帝は水銀を不老不死の妙薬だと思い込んでしまったのでしょうか?
水銀は怖い物質
水銀は常温で唯一凝固しない金属で、銀色の液体状の物質です。昔は家庭用の体温計なんかに使われており、体温計を割ったら出てきてビックリしたなんていう体験をした人もいるでしょう。触ろうとすればはじいてコロコロと動く不思議さにとりこになっていじくりまわして遊んでしまったという人もいるかもしれませんが、液体の状態であれば特に問題はないのだそう。
ただ、水銀は気化すると猛毒になってしまいます水銀は20度ほどの温度でも蒸発してしまうらしいので、やはり水銀をいじくりまわすのは危険です。
そんな水銀が巻き起こした大事件といえば「公害の原点」と呼ばれる水俣病。炭素と水銀がくっついてできたメチル水銀が含まれた工場廃液が川に流され、その川に住んでいた汚染された魚を食べた人々が中枢神経を冒されて苦しみました。そのため、多くの日本人が水銀を怖いものとして認識しているのですが、なぜ始皇帝はこんなおそろしいものを不老不死の妙薬と思い込んでしまったのでしょう?
始皇帝の願いをかなえるべく生み出された薬「辰砂」
始皇帝は中華統一を成し遂げた後、まずは蓬莱の国の仙人もしくは仙薬を探させました。道教の祖である老子が不老不死であったと伝えられていることや道教を信奉して修行に励めば不老不死の仙人になれると考えられていたことから始皇帝は仙人から不老不死の妙薬をもらおうと考えたのでしょう。
ところが、待てど暮らせど仙人も仙薬も手に入らず…。しびれを切らした始皇帝は臣下たちに「はやく仙薬を持ってこい!ていうかもうお前らがつくれ!」とブチギレます。
「このまま薬ができなかったら、始皇帝に処刑されてしまうかも…」と恐怖に震え上がった臣下たちは見様見真似で錬丹術、すなわち仙薬づくりに励みました。その結果、「辰砂」という丸薬が完成。始皇帝は大喜びでその辰砂を飲んだと言われています。
どうみてもすごい薬にしか見えない辰砂
ついに出来上がった不老不死の妙薬「辰砂」。しかし、皆さん既におわかりでしょうが、この辰砂は水銀でできています。水銀といっても、液体のままの水銀ではなく硫黄と結びついた硫化水銀だったようですが…。
真っ赤な見た目のそれは「丹砂」やら「朱砂」とも呼ばれ、ヨーロッパでは「賢者の石」なんていう名前まで付けられています。そんな神秘的な見た目の薬なわけですから作り上げた人も「やっと不老不死の薬ができた!」と喜んだでしょうし、始皇帝も「間違いなく不老不死の薬だ!」と喜んで飲んだに違いありません。
気になるその効能は…?
素晴らしい薬を手に入れたと思われた始皇帝ですが、辰砂を飲んだ後ほどなくして亡くなっています。まぁやはり水銀は毒でしかなかったわけです。
ところが、この辰砂は現在でも漢方薬として使われているのだとか…!不老不死にこそなりませんが、鎮静・催眠の効果が得られるということ、メチル水銀などより毒性が低いということで問題ないと考えられているようです。たとえそうだとしてもあまり飲みたくない薬ですね…。
三国志ライターchopsticksの独り言
不老不死を願い、かえってその命を縮めてしまった始皇帝。しかし、始皇帝と同じように不老不死を願い、同じように辰砂を飲んで死んでいった皇帝はその後も後を絶たなかったようです…。だれかがもっと早く水銀の危険性に気づいていたら…!
そんなことを考えてしまうエピソードですね。
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