ロシア軍がウクライナ東部で攻勢を強めているのに対しウクライナ軍はウクライナ南部ヘルソン州を流れるドニプロ川を渡って大規模な作戦を展開しています。どうして、ウクライナは厳しい東部戦線を置いてもドニプロ川を越えようとするのでしょうか?
ドニプロ川を渡河すればクリミアが目前に
激しい攻防が続くドニプロ川ですが、どうして、ウクライナ軍はドニプロ川渡河にこだわるのでしょうか?その理由は、ドニプロ川を越えた先のヘルソン州はクリミア半島に最も近い場所であり、ここを奪われるとロシア軍も一定の兵力を、おそらく優勢な東部戦線から振り向けてくる可能性が高いからです。ウクライナ軍としては、ドニプロ川を越えれば、クリミアが近くなり、おまけにロシアが東部戦線の兵力を分散し、東部のウクライナ軍も少し楽になる事になります。
本来は5月の渡河だったがダム決壊で延期
ウクライナ軍は、今年の5月にはドニプロ川渡河を計画していましたが、6月にヘルソン州で水力発電所のダムが決壊し、下流では広い範囲が浸水した事で、ウクライナ軍もドニプロ川の渡河を延期せざるを得ませんでした。しかし5か月が経過して、水没の影響が収まったので、ウクライナ側もドニプロ川渡河に本腰を入れているのです。
ウクライナ軍一部部隊が渡河を成功させているが
ウクライナ特殊部隊は、南部ヘルソン州を流れるドニプロ川を渡り、ロシア側が占領を続ける東岸地域で一部の集落に部隊を前進させているようです。アメリカのシンクタンク「戦争研究所」の分析では、ウクライナは奪還した陣地で補給と軍備の立て直しを開始していますが、ロシア軍が押し返しままならない状態です。ウクライナにとってもロシアにとってもドニプロ川東岸の占領は死活問題であり、今後も激しい戦いが続くでしょう。