皆さんは自分のアイデンティティといえば何を思い浮かべますか?
男や女といった性別のことを思い浮かべたり日本人やアメリカ人といった国籍のことを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?私たち日本人は日本語を母語とし、日本列島に住む大和民族として、でも普段はそんなことを気に留めることなく暮らしていますよね。でも、自分たちが何という民族であるかを常に意識し、その民族であることを誇って暮らしている人たちもいます。
その最たる例として挙げられるのがお隣中国にたくさん住んでいる漢民族です。たくさんの異民族に囲まれて暮らしていた漢民族の人々は自分が漢民族であるというプライドを常に持って暮らしてきました。ところで、この漢民族というのは一体どのような人たちなのでしょうか?今回はそのルーツや民族性に迫っていきたいと思います。
漢民族のルーツは神話世界まで遡る!?
4000年という長い歴史を誇る中国に住む漢民族の歴史はやはり長いようで、そのルーツは神話世界にまで遡るとも言われています。しかし、彼らが自分たちを1つの民族として意識し始めたのは周王朝あたりであると言われています。
殷の紂王を討ち取った周の武王が古代の聖王である神農・黄帝・堯・舜・禹の子孫を探し出して中原あたりに封じ「華族」と称しました。これが漢民族のアイデンティティの萌芽であると考えられています。また、中原あたりはもともと夏王朝が栄えた地でもあったためいつしか中原あたりに住む人々を「華夏族」と呼ぶようになりました。中国人は今でも中国を「華夏」と呼んだり中華文明を「華夏文明」と呼んだりすることがあるようですね。
周辺民族に「漢人」と呼ばれるように
周王朝が衰えて諸侯が独立を果たし夥しい数の国が乱立すると「楚人」「斉人」「秦人」といった具合に自分が属する国が「華夏族」に代わるアイデンティティとなりましたが、戦国時代に秦が中華統一を果たすとそれらのアイデンティティは失われることになりました。しかし、更なる他者が現れて彼らは1つのアイデンティティを確立するに至ります。その他者というのは異民族です。
秦の後に漢王朝が興ると異民族たちは漢に住む人々のことを「漢人」と呼ぶようになりました。これが「漢民族」という言葉の由来になります。
最初は漢に住む人くらいの意味しか持たない言葉でしたが、「漢人」という言葉で括られた人々は他の異民族の追随を許さないほど文化を発展させ、魏晋南北朝時代あたりからは他民族からも羨望の眼差しを受けるようになり、「漢民族」というアイデンティティは一種のブランドにまで成り上がったのでした。
漢民族の文化・習俗を受け継げば皆漢民族!?
こと詩文に至っては他民族も羨むほどに独自の文化を発展させた漢民族ですが、彼らは決して純血というわけではありません。そりゃあ多くの異民族と国境を接していますから、当然血は混ざります。では、彼らはどのようにして自分たち漢民族と他の民族とを識別しているのでしょうか?
実は、漢民族の文化や習俗を受け継げば異民族の血を引いていようが漢民族になれちゃうみたいです。
五胡十六国時代には北半分を異民族に取られていた漢民族ですが、隋唐代にもなると彼らの子孫は全員漢民族ということになったみたいですし、その後に成立した異民族王朝の人たちの多くもなんやかんやで同化して漢民族になっているみたいですからね。パパもママも異民族だけど、子どもは中国で生まれて中国語を話して中国の文化を受け継いでいるから漢民族なんていうことも違和感なく受け入れられていたのではないでしょうか。
三国志ライターchopsticksの独り言
民族というものは意外とファジーで遺伝子がどうのこうので一方的に「あなたは〇〇民族です」と決めつけることはできないのかもしれません。自分は日本人だと思っているのに「遺伝子を調べたところあなたはモンゴル人でした。」なんて言われてもちょっと受け入れにくいですしね。自分が何という民族なのかは本人の生まれや成育歴、意識によって決定されるべきものなのかもしれませんね。
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