現地時間3月10日に開催された第96回米アカデミー賞において物議を醸す出来事が発生しました。主演女優賞部門の発表時、エマ・ストーンがプレゼンターとしてトロフィーを授与しにきたミシェル・ヨーを軽視、あるいは無視してトロフィーの受け取りを拒否したというのです。一部では、アジア人蔑視として非難を呼んでいるこの出来事は事実なのでしょうか?
何が起きたのか?
では、今回物議を醸したシーンを解説しましょう。今回のアカデミー賞の主演女優賞部門の発表では、前年度に受賞した5人がプレゼンターとして壇上に立ち、一人、一人のプレゼンターが、今回ノミネートされた候補者の功績を述べトロフィーを手渡す形式になっていました。今回「哀れなるものたち」で主演女優賞を受賞したエマ・ストーンは前年度の受賞者でプレゼンターであるミシェル・ヨ―からトロフィーを受け取らず、隣にいたジェニファー・ローレンスに押し付けるような素振りをしたのです。その後、トロフィーはびっくりしたジェニファー・ローレンスからエマ・ストーンに手渡されました。この映像を見て、一部の視聴者からエマ・ストーンは東洋系のミシェル・ヨーからトロフィーを受けとる事を拒否したのではないか?彼女はアジア人を蔑視したと非難されたのです。
ミシェル・ヨーのコメント
個人が人種差別的な信条を持っていても、それは個人の自由の範疇ですが、アカデミー賞授賞式のような公の場で人種差別的な態度をとる事は賢明ではありません。本当にエマ・ストーンはミシェル・ヨーを無視したのでしょうか?授賞式後にミシェル・ヨーは沈黙を破り、エマ・ストーンとハグをしている写真を投稿し、今回のハプニングについて、エマ・ストーンが親友のジェニファー・ローレンスと受賞の喜びを分かち合おうとして、こうなってしまったと説明。そして、エマとジェニファーの仲の良さは、私とジェイミー・リー・カーティスの仲の良さを思い出させてくれたと結んでいます。
ミシェル・ヨーの説明が自然では?
筆者がエマ・ストーンとジェニファー・ローレンスが親友であるという予備知識を入れて、同じ動画を見ると、確かにエマがアカデミー主演女優賞を受賞した喜びを親友のジェニファー・ローレンスと分かち合おうとして、ミシェル・ヨーからトロフィーを受け取らず、横にスライドさせたように見えます。ミシェル・ヨーとハグしなかったとはいえ、冷たい視線を向けているわけでもなく、喜びで気が動転しているだけという印象しか受けませんでした。
先入観や人種差別経験を他人に重ねる人々
筆者がこのニュースを読んでいて気になったのは、記事にコメントを寄せている人に、「そうは言っても白人はアジア人を差別しているからね。」或いは「これまで人種差別をしてきたからね。」というコメントが多い事でした。筆者は人種差別を許してはいけないと思いますし、過去に白人がアジア人を差別的に扱ってきた歴史も否定しません。現在でも白人社会にアジア系への差別が残っていないと断言する事も出来ません。しかし、今回の動画やミシェル・ヨーのコメントを信じる限り、エマ・ストーンがミシェル・ヨーに差別的な扱いをしているとは全く思えません。その時点でエマはアジア人差別をしていないという事で終わりだと思うのですが、この事実とは無関係に、でも白人はアジア人を差別してきたじゃないかと言ったり、今でもアジア人差別は残っていると主張する人がいるのは不可解です。個別の差別事例を人種全体に当てはめたり、逆に全体の差別事例を個別に矮小化してしまうのは、逆に差別を助長し、新しい偏見を産むだけではないでしょうか?
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