縄文時代というと、何とも穏やかで平和な時代のイメージがありますが、実際にはそうでもなかったかもしれません。最近の研究により、縄文時代の人々の頭蓋骨に、鋭利な突器でつけられた痕跡が見つかったのです。縄文時代の人々も争いや殺人から逃れられなかったのでしょうか?
鋭利な刺突器による頭蓋骨の孔を発見
東京大学の平野力也大学院生と海部陽介教授らの研究チームが行った調査によれば、1920年に岡山県倉敷市羽島貝塚で発掘された縄文時代の頭蓋骨には、鋭利な刺突器によって破壊的に開けられた孔の痕跡があったというのです。これまで、この頭蓋骨の孔は「輸送による破損」と考えられていましたが、肉眼とCTスキャンを用いた検討の結果、孔が典型的な「刺器損傷」であることが判明しました。
縄文時代は平和なだけではなかった?
縄文時代は、氷河期が終わってから約1万4~5000年前から始まり、紀元前3~5世紀まで続いた時代です。これまで、この時代は気候が温暖で食料が豊富だったため、組織的な戦闘の証拠がなく、平和な時代だったと考えられていました。しかし、実際には自損や狩猟などではなく、第三者による損傷が疑われる殺傷人骨が報告されています。1万年以上の縄文時代の間には、何百人が動員されるような大きな争いはなくても個々人の殺し合いは、存在していたようです。
今後の研究が期待される
縄文時代の暴力や闘争についての研究はこれまで行われてきましたが、網羅的な調査や第三者による検証は不十分でした。今回の東大チームの研究は、この問題に光を当てるものであり、今後の研究が期待されます。ただし、頭蓋骨に刺突痕があるからといって、すべてが戦いや殺人の痕跡とは限りません。縄文時代には死者への儀式として遺体を損壊する風習もあった可能性があります。しかし、今回の研究成果は、人為的損傷が存在する可能性を示唆し、今後の調査がますます重要になってきます。
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