怪しい薬を飲んだり、男女がぶつかるようなアクシデントで性別が入れ替わる。漫画や映画で時々見られる設定ですが、昆虫に寄生する共生細菌ボルバキアは、実際に宿主をメス化したり、オスを殺してメスだけを産まれるようにする特殊な能力があるようです。
母子にしか感染しないボルバキア
ボルバキアは65%以上の昆虫種に感染している共生細菌です。このボルバキアはほぼ100%宿主の卵巣に寄生しています。理由は、ボルバキアがミトコンドリアのように母から子に伝わる性質を持つためです。ボルバキアは確実に子孫を残すために宿主の生殖に干渉し、オスを排除してメスだけを残そうとします。その中で不要になるオスを殺したり、メス化させるのです。
ボルバキアのミラクルな能力
これまでの研究で、ボルバキアは以下のような手法でオスを排除する事が分っています。①ボルバキアに感染していないメスの繁殖を感染したオスが妨害する②メスがオスなしで子孫を産めるようにする。③遺伝的にオスである宿主をメスに性転換させる④オスの卵が発生すると殺しメスだけ生まれるようにする。このようにしてボルバキアは感染した昆虫にオスが生まれないように仕向け、確実に子孫が残せるよう生殖機能を操作しているのです。
恐ろしいが人間にメリットも
ボルバキアは昆虫にしか感染しないので、人間に被害はありませんが、もし、人間に同じように作用したら恐ろしいですね。ただ、ボルバキアは使いようによっては人間に恩恵をもたらします。例えば、デング熱やジカ熱の感染源であるネッタイシマカにボルバキアが寄生するとウイルスの感染能力が阻害されて無毒化する事が知られていて、実際にブラジルでは2017年より、ボルバキアを感染させたネッタイシマカを大量に放虫する試みが開始されています。
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