ロシアの軍事侵攻が2年半に及ぶウクライナでは、ロシアのクルスク州で大規模な反抗作戦が続いている一方、国内ではロシア軍による激しい戦闘が絶え間なく繰り広げられています。戦争犯罪を記録する活動で一昨年ノーベル平和賞を受賞したウクライナの人権団体「市民自由センター」の代表、オレクサンドラ・マトイチュク氏は「市民を守る唯一の手段は軍事力しかない」と苦しい胸中を明かしました。
ロシアの指導者を侵略の罪で裁くことを目指す
「市民自由センター」は、ロシア軍がウクライナで行った暴力や性的暴行などの戦争犯罪を記録する活動をしています。マトイチュク氏がこの活動を続ける理由は、ロシアのプーチン大統領や軍事・政治の幹部を侵略の罪で訴追するという前例を作り、将来の戦争を防ぐためです。彼女は「戦争を始めた国家と指導者が裁かれなければ、侵略戦争を止めることはできない」と強調しています。
記録された78,000件以上の犯罪とロシアの責任追及
「市民自由センター」は、戦争が始まって以来、7万8000件以上のロシア軍の戦争犯罪を記録しました。この記録を基に、国際社会がロシアの戦争犯罪を裁き、被害を受けたウクライナの市民が賠償を受けられるようにすることが、マトイチュク氏の目指すところです。
ウクライナ軍以外に市民を守る手段はない
ロシアは国際法に反しながらも、平然と住宅や学校、病院への攻撃を続けています。国際社会はこれを非難していますが、プーチン大統領を裁判にかけることは依然として困難です。マトイチュク氏は、現在の国際社会の仕組みは権威主義や戦争から人々を守るには不十分であり、ウクライナの市民を守るにはウクライナ軍しかないと述べ、平和的手段が通じない現状に無力さを感じていると語りました。
ロシアへの安易な妥協は危険
最近のウクライナの世論調査では、領土を諦め即時停戦を求める声が増えていますが、マトイチュク氏はこの傾向に警鐘を鳴らしています。彼女は、ロシア占領下でウクライナ市民が自由を失い、法的な不安定な状況に置かれるリスクを指摘し、占領地の奪還を強く主張しています。
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