イギリス政府は5月11日、ウクライナに対し長距離巡行ミサイル「ストームシャドウ」を供与すると発表しました。ベン・ウォレス国防相は「ストームシャドウがウクライナの自衛に最大の好機をもたらす」としています。この決断はゼレンスキー大統領が繰り返し主張していた西側諸国への武器供与要請に応えたものでした。ウォレス国防相は「ストームシャドウによりウクライナは領土に駐留しているロシア軍を押し返せるようになるだろう」とも述べています。
出典:イギリス、ウクライナに長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」を提供
従来の高機動ロケット砲ハイマースの3倍の射程
ウクライナが現在保有しているアメリカが提供した高機動ロケット砲「ハイマース」の射程は80キロです。それに対しストームシャドウの射程距離は250キロにも及び、ウクライナのパイロットはそれだけ前線から遠く離れてロシア軍に攻撃を仕掛ける事が可能になります。ストームシャドウは高性能で発射後は敵のレーダー探知を回避する為に高度に移動した後、赤外線探知機で標的の位置を把握して攻撃する長距離巡行ミサイルです。またストームシャドウは技師や科学者により改良され、ウクライナ軍が所有するソビエト連邦時代の航空機でも使用できるそうです。
民間施設攻撃で首を絞めたロシア
どうして、イギリスはストームシャドウの供与を認めたのでしょうか?その背景にはロシアが繰り返す民間施設攻撃に対し、イギリスが強い懸念を示している事があります。すでに昨年の12月にイギリスはロシアのセルゲイ・ショイグ国防相に対し、ロシアが攻撃を続けるならイギリスはさらに強力な武器をウクライナに提供する事になると、警告の書簡を送っていました。
ウォレス国防相は今回の措置はロシアの行動のエスカレーションによりもたらされたとしロシアの自業自得としています。あまりにも非人道的なウクライナ侵略後のロシアの行動に対し世論がロシアを非難し、これまで腰が重かったイギリスもロシアにそっぽを向き始めたのでしょう。プーチン大統領の自業自得です。
ウクライナのレズニコフ国防相はロシア敗北を説明
ウクライナのオレクシイ・レズニコフ国防相はストームシャドウ供与を念頭に、ロシア国内の標的を狙うために長距離ミサイルを使うことはないと強調。欧州連合(EU)での会合では「最大300キロメートルの距離から攻撃できれば、ロシア軍は防衛できず負けるしかない」と説明しました。
ただし、ロシア国内へのストームシャドウの攻撃はロシア軍による報復措置を呼び込んで、欧州諸国にも危険が迫る事を考慮し「皆さんの武器がロシア領土攻撃に関与することはないとウクライナは保証する用意がある」と念を押す事も忘れていません。
ロシアの報復はある?
しかし、ロシアにはストームシャドウ以上に高性能の長距離巡行ミサイルが存在し、今後、それらがウクライナ攻撃に使用される恐れもあります。ウクライナとしては供与されたストームシャドウをあくまでもウクライナ国内からロシア軍を追い払うためにのみ使用し、ロシアの過剰な報復を招かないための予防線を張るのかも知れません。
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