7月4日イギリスで総選挙が行われ、労働党を率いるキア・スターマー党首が圧勝。14年ぶりとなる保守党から労働党への政権交代が実現しました。日本ではアメリカ大統領選と比較しても話題にならないイギリスの総選挙ですが、そもそもスターマー氏はどんな人物なのでしょうか?
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政治への信頼回復が急務
主将就任後初の演説を行ったスターマー氏は「イギリスが自らのアイデンティティーを再発見し、より広範なリセットが必要だと述べ、同時に政治への信頼を回復し、全ての有権者に奉仕するために戦うと結びました」スターマー氏は自身の政権が穏健な中道左派である事を念頭に、世界がいかに嵐の中で激動しようとイギリスはより穏やかな海へと道を切り開く能力を持っているとし、特に政治家は荒波の先頭に立ち、過激な主張や極端な政治路線ではなく、有権者の信頼を回復する為に必要な施策を積み上げるべきとしています。スターマー氏は、派手なパフォーマンスをせず、規律の鬼と称される実直な人物で、あまり有権者の人気を集めているとは言えず、今回の就任演説も自身の地味さを堅実さ、着実さとして見てもらいたいという狙いがあるのでしょう。
あだ名はミスタールール
スターマー氏は労働党を支持する労働者階級の家に生まれました。実家は裕福でははく、母は難病に苦しめられていたので、医療や福祉の充実に強い関心を抱いたそうです。法廷弁護士や検事を経て、政治家の腐敗を厳しく糾弾、2015年には政治家に転身して労働党から出馬し初当選を果たしました。モットーは労働者に寄り添う政治で、労働党が労働者から乖離して求心力を失った苦い経験を振り返り、党内を改革。増税か減税の労働党ではなく、経済成長も果たせる労働党として実績を積み重ね、今回、政権奪取に漕ぎつけました。
難しい舵取り
一般に政権交代は、前政権が山積する問題に対処しきれていないと有権者が考えた時に起こります。今回の14年ぶりの政権交代も例外ではなく、英国の国民税負担は第2次世界大戦直後以降で最高水準に達する見込みで、純負債は年間の経済生産高にほぼ匹敵していて、増え続ける移民対策も大きな課題となっています。スターマー政権は、経済の安定と国民医療サービスの待機時間短縮、新しい国境警備組織の発足と公営の再生可能エネルギー会社の設立。反社会的行為の取り締まり強化、教職員6500人の増員等を公約に掲げていますが、いずれも国費投入が必要で国民の税負担を増やす事にもなるので難しい舵取りが迫られます。一方、スターマー政権の公約には、外交に関するものが何一つなく、ウクライナ戦争に関してはスナク政権の姿勢を踏襲し「特別な」同盟国であるアメリカに同調してウクライナへの軍事支援を続けるとしつつも、パレスチナ問題については、アメリカの意向で右往左往する面が見られるなど、14年間政権から遠ざかったブランクが響いている感じでもあります。
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