8月6日よりウクライナ軍は隣接するロシアクルスク州を越境攻撃。戦闘が続き、ゼレンスキー大統領の報道官の話ではウクライナ軍はこれまでに100平方キロメートルを掌握、数百人を捕虜としヨーロッパへのガス輸送の拠点となる施設を制圧したようです。
クルスク住民プーチン大統領へ支援訴え
ロシア独立系メディアによると8月8日、クルスク州の住民がプーチン大統領に支援を訴えているとする動画を放送。その中で住民たちはゲラシモフ参謀総長は状況は制御されているとしているが、それは嘘で、激しい戦闘が続いているとしてプーチン大統領に支援を求めています。また、クルスク州に隣接するリペツク州の知事は8月9日、ウクライナ軍の無人機攻撃で爆発が発生しこれまでに9人がけがをしたとSNSに投稿。これに対しウクライナ軍は誘導爆弾を保管する弾薬庫などを攻撃したと発表しました。
攻勢は本格的なモノ
今回のウクライナ軍の攻勢は、当初、偶発的な事件とされていましたが、時が経過するにつれ、ウクライナ戦争でも最大規模のウクライナによるロシア越境侵攻だと判明しています。今回の戦いでは、ウクライナ陸軍の精鋭、第22独立機械化旅団と第88独立機械化旅団、そして空中強襲軍(空挺軍)の第80空中強襲旅団が参加し、砲兵部隊やドローンチーム、防空部隊が連携しています。それぞれの旅団の規模は2000人で、それだけでも6000人に達する大規模なものです。
作戦が裏目に出るリスクも
現在は、ウクライナ軍優勢で続いているクルスク侵攻作戦ですが、侵攻部隊の侵攻速度によっては支援の砲兵や防空システム、兵站の支援を受けられる範囲を越え、逆にクルスクの奥地で部隊が孤立する恐れもあります。ただし、今回の侵攻作戦は冬にも開始されると見られているウクライナとロシアの停戦交渉において、ウクライナの切り札として決行されたと考えられ、どこかの時点で侵攻は停まり、防衛の構えに入ると考えられます。
ウクライナをなめていたロシア軍を驚かせた
予断を許さない状況は継続中ですが、防戦一方に見えたウクライナ軍は、攻撃のペースと規模でロシア軍を狼狽させました。ロシアは核をカードとして自国領土への攻撃は宣戦布告とみなすとして欧州諸国を恫喝し、自国内への侵攻は無いと高をくくっていたわけですが、その慢心をウクライナ軍が見事に突いた形です。今回の奇襲は、戦争をウクライナ領内に留めておき、ロシア国民の無関心のうちに勝利したいと考えるプーチン大統領の思惑を完全にご破算にしたのです。
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