NHKの大河ドラマは以前から主人公となった人物の出身地などの観光を振興してきました。
その影響力。
地方に与える経済効果は非常に大きな物となります。
大河ドラマとご当地となる地域の観光事業は、
NHK中心としたメディアと地域のコラボレーション事業ともいえるものです。
さてNHK大河ドラマ「西郷どん」の経済効果はどのくらいの規模になるのでしょうか。
今回は過去の大河ドラマの実績を踏まえ、
地域に与える観光を中心とした経済効果について考察していきます。
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この記事の目次
大河ドラマ篤姫の経済効果はお幾ら?
鹿児島県ということで見れば、
大河ドラマによる経済効果の恩恵を受け事は2008年もありました。
幕末時代を舞台としていた「篤姫」です。
このドラマでは篤姫が主役でした。
篤姫は宮崎あおいさんが主演女優を務め、「篤姫」ブームを起こしました。
篤姫の出身地である鹿児島県ではNHKとコラボして観光事業を展開していったのです。
鹿児島地域経済研究所が出した当時の試算結果では、
地元への経済効果は262億円であったと分析しています。
篤姫の経済効果は、凄まじく大きかったのだということで
「西郷どん」への期待も地元では集まっているのでしょう。
篤姫経済効果で潤った産業はなに?
2008年のNHK大河ドラマ「篤姫」では、主に観光事業への経済効果が大きかったと分析されています。
262億円の内訳は観光客の集客によるお土産代、
宿泊費などの直接効果が151億円あり、
地域の産業まで波及した間接効果が111億円あったとのことです。
これで合計262億円です。
2009年が篤姫の養父であった
薩摩藩藩主・島津斉彬の生誕200周年記念であったことも追い風になったようです。
当時の記事を見ますと、日本銀行鹿児島支店の試算では更に経済効果は大きかったようです。
その金額は279億円とされいます。
歴代の大河ドラマの経済効果はどうだった?
歴代のNHK大河ドラマの経済効果がどの程度あったのかその分析資料があります。
篤姫以前の大河ドラマの地元への経済効果を見ていましょう。
2003年の「武蔵(MUSASHI)」が148億円(日本銀行下関支店試算)。
2004年の「新撰組!」が203億円(日本銀行京都支店試算)。
2005年の「義経」が179億円(日本銀行下関支店試算)。
2006年の「功名が辻」が135億円(大河ドラマ高知県推進協議会試算)。
2007年の「風林火山」が66億円(日本銀行松本支店試算試算)
2007年の「篤姫」が262億円(鹿児島地域経済研究所試算)、
279億円(日本銀行鹿児島支店試算)となっています。
元々世界的な観光地でもある京都を舞台とした「新撰組!」よりも
主人公「篤姫」の出身地であった鹿児島県の経済効果大の方が大きかったようです。
2007年のそれだけの「篤姫」ブームは大きかったのでしょうね。
以前は「大河ドラマでは幕末は鬼門」といわれ視聴率も苦戦したのですが、
現在は「考証重視」から華やかな「エンタメ路線」になったことが、
ドラマの成功と、関連する地元への経済効果につながっているのではないでしょうか。
放送時点では「篤姫」の経済効果が過去の大河ドラマの中でもランキング1位だったのでしょう
大河ドラマ経済効果共通の問題点
大河ドラマの経済波及効果は、
ドラマが終わってしまうと一気に終息してしまうという傾向があることが
日銀下関支店の分析によって分かっています。
アニメジャンルでも「聖地巡礼」というアニメの舞台になった場所に人が訪れることがあるのですが、
経済効果があるのかどうかまでは分かりません。
ただ、そのアニメが終わってしまうとやはり勢いはなくなります。
メディアを媒介としたブームは回転が速いので、どうしても一過性になりがちでしょう。
観光事業などへの経済波及効果を一過性に終わらせないためには、
史跡、景観などハード的な観光資源だけでなく、ソフトウェア的な観光資源、
サービスが必要ではないかという提言もあります。
地域の連携、産業の連携、歴史との連携という形で、
魅力ある観光サービスを提供していこうという提言です。
観光がひとつのスポットに止まらない広がりを持って
展開していくアイデアが10年以上前から語られていたようです。
篤姫効果で誕生した「町あるき観光」とはどんなモノ
「篤姫」が放送されていた当時、「町あるき観光」という商品が登場しました。
これはツアー旅行の対極にあるもので、
駆け足ではなく訪れる人々の歩く速度と視点で旅行を企画するものでした。
主なターゲットとなったのは当時定年を迎えた「団塊の世代」です。
彼らの歴史への知的好奇心と行動力の豊かさを活用すべく計画されたものでした。
2008年度から「鹿児島ぶらりまち歩き」として12コースの観光商品を提供しました。
しかしながら、NHK大河ドラマ「篤姫」の経済効果の恩恵は受けられなかったようです。
大河ドラマは大手の旅行会社にとってもビッグチャンスであり、そのためのツアー商品を売りだします。
この競争に勝てなかったというのが、原因であったようです。
ただ、この観光の考え方は当時はまだ浸透していませんでした。
10年たった今、果たしてどうなるのでしょうか。
篤姫登場大河ドラマ西郷どんの経済効果はなんと〇〇〇
日銀鹿児島支店が発表したところによりますと「西郷どん」の経済効果は307億円になるとのことです。
篤姫を軽く抜きましたね。
「篤姫」は過去20年間の大河ドラマでは最大のヒットで視聴率は平均24.5%で、
ランキング1位となっています。
この経済効果の大きさに恩恵を受ける業種はどこだという感じで
関連株を調べたくなるレベルではないでしょうか。
観光事業を中心に、御みやげ物、伝統品、鹿児島県の食文化などもブームになるかもしれません。
さつま揚げとかどうでしょうかね。
篤姫にとって鹿児島は生まれ故郷であっても、その活躍はほとんど江戸でした。
しかし、今回の「西郷どん」では主人公は西郷隆盛です。
日本ではなく、どちらかといえば薩摩藩(鹿児島)から抜け切れなかった意識が、
西郷隆盛の悲劇の一因であったかもしれません。
しかし、もう幕末は乾いた歴史として21世紀に私たちの前にあるのです。
地元との密着度では篤姫をしのぐでしょう。
この経済効果の試算額も納得がいくというものです。
幕末ライター夜食の独り言
幕末から明治初期を経験し生きている人はもういないでしょう。
その意味では乾いた時代となっています。
西南戦争の西郷隆盛の最期は悲劇ではありますが、
歴史的な事実として、恩讐が絡まない乾いた歴史になっているのだと思います。
かつての「篤姫」の経済効果も大きかったですが、薩摩というものを捨てきれず、
最終的に、薩摩を選び、悲劇的に死んでいった西郷隆盛は、鹿児島では人気抜群です。
篤姫以上の経済効果を鹿児島県にもたらすかしれません。
もし西南戦争での最期が無く無事に明治政府の中枢で生きていたら、
逆にこの想定される経済効果も無かったのかもしれません。
この経済効果に、西郷隆盛も空の上で何とも言えない笑みを浮かべているような気もします。
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