小野小町(おののこまち)や在原業平(ありわらのなりひら)など、
平安時代の人々は沢山の和歌を詠んでいます。
でも、正直なところ、和歌って何?という人も多いのでは・・
どんなルールがあり、どんな特徴があるのでしょうか?
はじさんでは、日本固有の文化、和歌について簡単に説明します。
この記事の目次
和歌と短歌は違うの?同じなの?
私達は、和歌と言ったり、短歌と言ったりします。
どちらも五・七・五・七・七の三十一文字で
構成されているのですが両者は同じなのでしょうか?
大きな括りで言うと、日本語で読まれる歌は全て和歌というジャンルで
実は俳句も和歌なのです、短歌や俳句は和歌という大きなカテゴリの
1ジャンルという扱いなのですね。
狭義で言うと和歌と短歌の違いには、枕詞の有無があります。
和歌は、たらちねの、とか、うばたまの、とか、ちはやふる、とか
必ず使わないといけない枕詞(まくらことば)がありますが、
短歌には、その縛りはありません。
日本で最初に和歌を詠んだのは神様
和歌を最初に詠んだのは、日本神話の伝説では
天照大神(あまてらすおおみかみ)の弟のスサノオノミコトとされ、
その歌は下のようなものです。
「やくもたつ やくもやえがき つまごめに やえがきつくる そのやえがきを」
こちらの意味は、スサノオが八本首の大蛇ヤマタノオロチを退治し、
オロチの生贄になる所だった美しいクシナダ姫を救い、そのお礼として、
姫を嫁にもらった時に詠んだもので、
「美しい妻を誰にも見られないように、屋敷に押し込めて
屋敷の周囲には八重に垣根を造って他人が覗けないようにしてやる」
という恐ろしい束縛夫ぶりを発揮したシーンです。
このようにスサノオの過激な愛情表現として誕生した和歌は、
必然的に、人を想う歌、恋い慕う歌、別れ歌、恨み歌として
最も沢山の内容が詠まれるようになります。
どうして沢山の和歌が詠まれるようになったの?
和歌の特徴は、日本人の性格にHITしています。
それは思った事をズバリ言う事をダサいとしている事です。
アメリカやイタリアでは、どこでも「アイラブユー」や、
「アモーレミオ」でOKなのかも知れませんが、
平安の昔の日本では、「好きだぜ!」とか「愛してます!」を
直線的に言う事を無粋としてNG にしていたのです。
「わざわざ和歌を送る位だから、気がある位知っています
なので、グッとくるような歌で気持ちを惹きつけて下さい」
当時の教養ある貴族は、こうして恋愛を文化にして楽しんでいました。
そこで、歌人は技術を凝らし、激しい想いを燃えるような夏草に例えたり、
激しい川の流れに例えたり、凍えるように白く輝く月と霜で、
独り身の寂しさを表現するようになったのです。
漢詩が入ってきて和歌は廃れるが、仮名文字の発明で再び盛んに・・
元々は文字が無かった日本では、万葉仮名(まんよう・かな)といい、
中国の漢字を音だけ拝借して和歌を表現していました。
例えば、最初のスサノオの和歌だって元々は、
「夜久毛多都伊豆毛夜幣賀岐都麻碁微爾夜幣賀岐都久流曾能夜幣賀岐袁」
と表現して、全部漢字だったのです。
しかし、これでは不便なので次第に漢文で文字を書くようになり、
万葉仮名の和歌は廃れていくようになります。
ところが、遣唐使が中国の政情不安で、西暦894年に廃止されると、
また日本の文化が見直されるようになり、その頃には現在の仮名が
完成していた事もあり、書く上での面倒くささも解消され、
和歌は再び繁栄するようになりました。
和歌にはルールがあるの?ないの?
和歌には、枕詞、序詞(じょことば)、掛け詞、縁詞(えんことば)
というような基本的なルールがあります。
ただ、個人の心情を詠むだけなら、上手い下手は無いのですが、
このようなルールが存在する事によって和歌は洗練され名人が誕生したのです。
では、一つずつルールを簡単に説明しましょう。
・枕詞・・・和歌の中で必ず使わないといけない五文字の言葉で、
上述した、ちはやふる、うばたまの、たらちねの、などがあります。
そして、枕詞には、必ず修飾語として決められた言葉が続きます。
例えば、ちはやふる、には神、神社、、うばたまの、には黒、夜、月、
たらちねの、には母、親が必ず修飾語として入ります。
これを知っていると、たらちねの・・とくれば、次は、母か親だなと
詠み人以外にも分り、和歌に重々しさが加わります。
・序詞・・・枕詞に似ていて、元の言葉を修飾して、意味を強調します。
例えば、
「あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を 一人かも寝む」
では、「しだり尾の」次の「ながながし夜を」が序詞になります。
山鳥の尾は長いですが、それにさらにながながし夜とする事で、
独り寝の夜は長いと印象づけているのです。
・掛詞・・・こちらはダジャレです、用途は「待つ」と「松」、
「秋」と「飽き」など、言葉に二重の意味を持たせる言葉遊びです。
有名な小野小町の、
「花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに」
でも、降るが経(ふ)る、ながめが長雨、(眺め)に掛っています。
こちらは、入れようとすると幾らでも入りそうですが、
あまり掛け詞を入れ過ぎると本来、何を言いたいのかが、
分らなくなってしまうので注意が必要です。
・縁詞・・・これは、和歌の中で使う言葉と関連する言葉を入れるという事で
例えば、蝶なら、ひらひら、袖なら、涙、結ぶ、川なら、流る、棲む、はやし
と、それに関連する言葉をつけていきます。
例えば、和歌の達人で歌仙の紀貫之(きのつらゆき)には、
こんな掛け詞満載の和歌があります。
「青柳の 糸よりかくる 春しもぞ みだれて花の ほころびにける」
ここには、糸の縁詞として、みだれる、ほころび、よりかくる
という3つの縁詞が織り込まれていますが、意図的に織り込まれたとも
感じさせない見事な和歌ですね。
kawausoの独り言
以上のように、和歌は、物事をストレートに言わず、比喩や例えを
多用して気持ちを表現するという日本人の性質に適合し、
長い、長い期間を生き残ってきました。
そして、次第に、ルールが整備されて縛りができつつも、
その縛りを感じさせない巧みさで歌を詠むという技巧まで凝らされます。
和歌は、このようにして現代人でも、あっと驚く程の高い、
文学性や芸術性を培っていったのです。
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