初心者でもよくわかる『はじめての銀河英雄伝説』再アニメ化情報解禁記念!

2017年10月14日


 

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日本を代表する“スペースオペラ”の代表作、『銀河英雄伝説』

(略して「銀英伝」)。

1980年代の第一巻初版発売以来、根強い人気を誇り、

そのアニメ化作品は2000年代までに、全165話からなる

長大なシリーズとなっています。

 

そして2017年9月20日、リブートとも言える

再アニメ化の情報が解禁され。注目を集めています。

 

時には『銀河三国志』などとも呼ばれることのある『銀河英雄伝説』。

はじめての三国志」のファンの皆様の中には

「SFはとっつきにくい」と思って、「銀英伝」に手を出しかねている

という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

大丈夫です!!

『銀河英雄伝説』はSFを知らない三国志のファンでも……、

いえ、三国志ファンであればこそ、より楽しめる作品なのです。

 

今回はまだ原作小説やアニメ版を読んだり観たりしたことのない、

「はじめての三国志」ファンの皆様のために

「銀英伝」をご紹介しちゃいましょう。

 

題して、『はじめての銀河英雄伝説』!!

画像引用元:アニメ「銀河英雄伝説 Die Neue These」公式サイト

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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「銀英伝」は遥か未来の銀河系を舞台に展開する壮大な戦国絵巻

画像引用元:アニメ「銀河英雄伝説 Die Neue These」公式サイト

 

本編のストーリーが開幕するのは、遥か未来。

西暦で言えば3600年頃の話です。

 

この時代、銀河系宇宙に進出した人類は、皇帝による

専制政治に支配された「ゴールデンバウム朝銀河帝国」と、

帝国の専制に抵抗する人々が建国した共和主義国家

「自由惑星同盟」という二大勢力に分裂。

両勢力による150年にわたる戦争が続いています。

 

500年にわたって続いてきた銀河帝国は、

爛熟と退廃を極め、無気力な第36代皇帝フリードリヒ4世の統治と、

大貴族の専横によって民衆は虐げられています。

 

一方の自由惑星同盟も、長年続く戦乱に倦み疲れ、

民衆を扇動することに長けた政治家ヨブ・トリューニヒトを始めとする

利権政治家たちによる退廃的な政治が行われています。

 

そんな時代、帝国と同盟に一人ずつ、2人の「戦争の天才」が出現します。

 

帝国には、貧乏貴族の子息として生まれ、

幼くして姉を皇帝に奪われたことをきっかけに、皇位簒奪を志す

「常勝の天才」ラインハルト・フォン・ローエングラム。

 

同盟には歴史家を志しながらも、父親の死をきっかけに

士官学校へ入学、そこで軍事の才能を見出され、

不承不承ながら軍人の道を歩む「不敗の魔術師」ヤン・ウェンリー。

 

物語は、この2人の主人公を軸として、帝国と同盟の戦い、

そして両国の興亡2人の運命を描く歴史絵巻として展開していきます。

 

歴史小説ファンならとっつきやすい銀英伝の特徴

画像引用元:アニメ「銀河英雄伝説 Die Neue These」公式サイト

 

『銀河英雄伝説』という小説の大きな特徴のひとつは、

 

“後世の視点から歴史を俯瞰して書いた歴史小説”

 

というスタイルを取っていることを挙げることができるでしょう。

 

つまり、この『銀河英雄伝説』という小説は、本編で語られた出来事より

未来の世界において、“歴史上の出来事”としてそれを描いているわけです。

 

そのため、本編の作中にはしばしば「後世の歴史家」による

その時代の出来事や登場人物を評価、あるいは批判的な内容の

意見が書かれています。

(作中の登場人物が、自分が経験した過去の出来事として

回想している場面などもあります)

 

例えて言うなら、現代の歴史家や小説家が、三国志や日本の戦国時代の

出来事を、後世の視点で客観的な歴史資料を交えつつ記述するのと

同じスタイルが取り入れられているわけです。

 

SFが苦手だなあ、と思う方でもとっつきやすい小説であることが

おわかり戴けますでしょうか?

 

「銀英伝」は“難しくないSF”だから大丈夫!!

 

でも、いくら歴史小説スタイルで書かれていても、結局SFなんでしょ?

そう思われる方もおられるかもしれません。

 

実際、SFというジャンル、特にSF小説においては、

宇宙空間での戦闘というものは

非常に描写が困難で、読み手もイメージが把握しにくいものと言えます。

 

地上での軍隊の戦闘と、宇宙空間での戦闘における最大の違いは

“地面がない”ことです。

 

地面のない三次元空間での戦闘は、地上で生きる人間にとって

非常にイメージしにくいものであることは、説明するまでもないでしょう。

 

まあ、それ以外にも、

速度や慣性、質量と言った宇宙空間ならではの問題等、

SF小説における宇宙空間の戦闘シーンというものは、

それをリアルに描こうとするほど、複雑な要素が絡み合い

読み手のイメージが追いつかなくなってしまう原因になるのです。

 

「スターウォーズ」や「宇宙戦艦ヤマト」のような映像作品なら

まだしも、SF小説においては、戦闘行動をリアルに描こうとするほど

考慮しなければいけない理屈上の問題点が増え、どうしても記述が

ややこしく、理解しづらくなる傾向にあることは否定できません。

 

しかし、『銀河英雄伝説』では、この点をある大胆な発想の転換で

補うことにより、SFに不慣れな読者にも理解しやすく、しかも

読んでいて面白い戦闘描写をすることに成功しているのです。

 

その『大胆な発想の転換』とは、一体どんなものなのでしょうか?

 

2次元的に描写される「銀英伝」の戦闘シーン

 

なんと、『銀河英雄伝説』においては、宇宙空間が3次元である、

という“科学的事実”を大胆に切り捨て、すべて同じ平面上で展開する

2次元的な戦闘を描いているのです。

 

「銀英伝」における軍隊同士の戦闘は、もっぱら宇宙艦隊同士の

戦闘として描かれます。

 

ひとつの艦隊(一個艦隊)は15000隻程度の艦艇で構成され、

この艦隊同士が宇宙空間で戦闘することになります。

 

そして、この艦隊同士の戦闘は、同じ平面上に展開して布陣した

艦隊同士が向き合って攻撃しあうことで行われます。

 

敵艦隊の数や勢いなど、状況にあわせて自軍の陣形を構成し、

ときに敵陣の中央を突破したり、半包囲したりといった攻防を

繰り返す戦いが展開します。

 

これって、宇宙空間の戦闘というより、

「はじめての三国志」ファンにとってはとても

馴染み深い光景を連想させませんか?

 

そうです。

つまり、三国志や大河ドラマで描かれる、地上を舞台にした戦闘を

歩兵や騎兵を宇宙戦艦に置き換えて行われるのが、

「銀英伝」における戦闘なのです。

 

3次元宇宙の戦いなのに「三方向から包囲」できる「銀英伝」の戦闘

 

実際の作中の描写を例として紹介しましょう。

 

銀河帝国の若き天才指揮官ラインハルト・フォン・ローエングラムが

20000隻の艦隊を持って自由惑星同盟領内のアスターテ星域に侵攻。

 

しかし、事前にこの侵攻の情報を察知していた同盟軍は

帝国軍の2倍、約40000隻の大艦隊を持ってこれを迎撃。

艦隊を3つにわけ、3方向から帝国軍を包囲しようと画策します。

 

宇宙空間を現実通り三次元であることを前提に考えた場合、

この描写はおかしいことにすぐ気が付きますよね。

立体空間である宇宙空間で敵を包囲しようとするなら、

敵艦隊を球状に取り囲んでしまわないと逃げられてしまいます。

 

しかし「銀英伝」においては、宇宙空間が3次元空間である

という“現実のお約束”を敢えて捨ててしまい、同一平面上での

戦いとして描写することで、誰にでもわかりやすく感覚として

捉えやすい戦闘=合戦シーンを描くことに成功しているわけです。

 

「宇宙空間の戦闘は同一平面上で行われる」

このことを「お約束=ルール」とすることで、

『銀河英雄伝説』という“戦争小説”は成立しているわけです。

 

(最も、主人公であるラインハルトとヤンは、時々このお約束を

無視した三次元的な用兵を見せる場面もあるのですが、その辺は

ご愛嬌、ということで)

 

ちなみに、自軍の戦力に倍する艦隊によって包囲殲滅の危機に晒された

ラインハルトは、ある策を用いて状況を打開していくのですが……。

 

……おっと、ここからはネタバレになってしまいますので、

ぜひ皆さんご自身で小説を読んで、確かめてくださいね。

 

歴史上の元ネタを考察するのも『銀河英雄伝説』の楽しみ方のひとつ

 

「銀英伝」の作者であり田中芳樹氏は、

中国史をはじめ、歴史に関する造詣の深さでも知られる小説家で、

「銀英伝」に描かれる数多の艦隊戦のシーンの多くが、

歴史上実際にあった合戦や海戦が元ネタになっていることも知られています。

 

歴史ファンなら、「銀英伝」を読みながら

「あ、これはあの合戦が元ネタだな」

と、思わずニヤリとさせられる。

 

そんな愉しみ方ができるのも、『銀河英雄伝説』の醍醐味のひとつなのです。

 

『銀河英雄伝説』、2018年に2度目のアニメ化企画が遂に始動

画像引用元:アニメ「銀河英雄伝説 Die Neue These」公式サイト

 

小説『銀河英雄伝説』は1982年から1989年にかけ、

本編全10巻、外伝4巻の全14巻が刊行、

その後も、幾度も版元を換えて刊行され、その累計売上は

1500万部を超えるという、大ベストセラーとなっています。

 

1988年からはOVAとしてアニメ化され、2000年までに

本編全四期110話、外伝全二期52話が制作された他、

劇場版映画として3本の作品が制作されています。

 

往年の名声優オールキャストとも言えるそのキャスティングから

アニメ版は「銀河声優伝説」とも呼ばれ、制作完了から

17年以上経った今でも、伝説的なOVAとして評価されています。

 

二度にわたるコミカライズも行われており、

現在は週刊ヤングジャンプに『封神演義』の作者として有名な

藤崎竜氏作画のコミック版が連載されています。

 

そして2017年9月20日、

二度目のアニメ化作品となる『銀河英雄伝説 Die Neue These』が

正式に発表され、その第一期『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』が

全12話構成で2018年4月よりテレビ放映されることも決定されています。

 

新アニメ版予習のために「銀英伝」読むならこれがオススメ!!

 

原作小説と、藤崎竜コミカライズ版は、それぞれKindleで読むことができます。

 

2018年4月からの新アニメ版放送開始に備え、

原作やコミック版で予習するのもいいかもしれませんね。

 

 

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石川克世

石川克世

三国志にハマったのは、高校時代に吉川英治の小説を読んだことがきっかけでした。最初のうちは蜀(特に関羽雲長)のファンでしたが、次第に曹操孟徳に入れ込むように。 三国志ばかりではなく、春秋戦国時代に興味を持って海音寺潮五郎の小説『孫子』を読んだり、 兵法書(『孫子』や『六韜』)や諸子百家(老荘の思想)などにも無節操に手を出しました。 好きな歴史人物: 曹操孟徳 織田信長 何か一言: 温故知新。 過去を知ることは、個人や国家の別なく、 現在を知り、そして未来を知ることであると思います。

-はじさん書評倶楽部