ゴールデンウィークですね。中国旅行を楽しんでいらっしゃる方も
大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
みどころも美味しいものも盛り沢山の中国、ぜひ満喫していただきたいです。
ただ、一つだけ申し上げたいことが……
それは、「日本豆腐には気をつけろ!」
……あと、それだけだと「はじめての三国志」らしくないので、
後半では「孔明点灯豆腐」のお話をさせて頂きます。
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この記事の目次
中華料理のメニューは簡単?
中国旅行のガイドブックを見ると、レストランでの注文の仕方について
「メニューの見方はとっても簡単! 食材、切り方、調理法が漢字で書いてある」
なんて書いてありますが、無責任なことを言いやがる(おっと失敬)。
例えば、「宫爆鸡丁」なんて書いてあって、何の予備知識もなく分かりますかね??
なんか、鶏肉をサイコロ型に刻んで油でドジャーッとやったっぽい名前ですけど、
味付けが不明です。めっちゃ辛くて食べれなかったら悲劇です。
やっぱり、お店の方にどういうものであるか聞くか、他の人の食べてるものや料理の写真を
指さして同じものを頼むのが無難ではないでしょうか。
(「宫爆鸡丁」は日本人にも馴染みのある鶏肉とナッツの炒めたもの。正しくは「宮保鸡丁」)
和食でも中華でもない「日本豆腐」
中国でレストランに入って、どれがオススメですかと店員さんに相談したら、
「日本人だったら日本豆腐がいいんじゃない?」と言われたことがあります。
「豆腐ってあの白いやつ?」
「いや日本豆腐は黄色いでしょう」
「冷たくて上に醤油をかける?」
「温かいお料理ですよ」
「お湯の中に昆布と豆腐を入れたやつ?」
「いやウチのはとろ~りとした海鮮あんをかけるんです」
なんだか分からないけど豆腐の上に海鮮あんならおいしいに違いないと思って
注文してみると、出てきたのは大きな耐熱ガラスのボウルに入ったバケツプリン
のようなもので、上にグリーンピースやエビの入ったあんがとろ~りとかかっています。
日本人だけど、日本豆腐、全然見たことないや……。
「日本豆腐」のお味
日本のお豆腐を思い浮かべながら口にいれると、カルチャーショックがお口いっぱいに
広がります。謎の中華スープ風味の味のないプリンのような感触です。
どうしてあれが日本豆腐なのでしょうか。
和食の茶碗蒸しが誤って中国に伝えられたのでしょうか。
材料は何かしらと思って中国のお料理レシピサイト「心食譜」を見てみると、
「日本豆腐」はスーパーや通販で売っているものを買ってきて、ご家庭では
トッピングだけを作るようです。別名「玉子豆腐」とありました。
なるほど、玉子豆腐! お豆のお豆腐だと思わずに、玉子豆腐だと思って食べれば、
そんなに違和感なかったかもしれません。
ここで冒頭に述べました「日本豆腐には気をつけろ!」です。
お豆腐だと思って食べるとびっくりするので気をつけて下さい!
お待ちかね「孔明点灯豆腐」
さてお待ちかね、「孔明点灯豆腐」の話です。
孔明点灯豆腐はまあるい小さいお豆腐を大皿にたくさん並べたような姿をしたお料理で、
豆腐のてっぺんにはクコの実とおぼしき小さな赤いとんがったものが突き立ててあります。
名前の由来はネットで見たかぎりでは分かりません。
「孔明点灯」とえば「观音灵签(観音霊簽)」という中国のおみくじの卦で、中吉に相当し、
意味は「心中正直、理順法寛、聖無私語、終有分明」だそうですが、お料理の姿からすると、
孔明点灯豆腐の由来は他にありそうです。
おそらく、むかし江西省南昌市にある縄金塔に明かりがともっている様子を見た女の子が
諸葛亮の名前をもじって読んだ句「塔上点灯 層層孔明诸葛亮」に
ちなんだものであろうと思います(句の意味は後で書きますね)。
大皿に豆腐を並べた形は、塔を横から眺めた場合の、塔にたくさんある窓の姿を
かたどったものではないでしょうか。赤い部分は窓の中にともっている明かりでしょう。
諸葛亮の名前をもじった句
縄金塔は今から1100年あまり前、唐の時代に建てられました。
(いま建っているのは後に建て直されたもの)
塔ができたばかりの頃、中秋節に郡の太守(長官)が家族を連れて縄金塔でお月見を
しましたが、何階建てにもなっている高い塔のたくさんの窓にすべて明かりがともされて
燦然と輝いており、その眺めに感動した太守の娘さんが次のような句を口ずさみました。
塔上点灯 層層孔明諸葛亮
(塔の上には明かりがともり
何層にもなっている穴(窓のこと)は明るく諸閣があかるい)
三国志・蜀の諸葛亮の名前と、あざなの孔明をもじっただじゃれのような句です。
孔明の孔は「あな」という意味ですから、「孔明」で穴が明るい、つまり窓に明かりが
ともっている様子を表わし、「諸葛亮」は音が通じる「諸閣亮」とかけたんですね。
「閣」はビルディング、「亮」は明るいという意味です。
下の句と花婿を募集する
太守の娘さんが塔の明かりに感動してダジャレの句を読んだ話には続きがあります。
こういう句は上の句と下の句を一セットにして「対聯」として鑑賞するもので、
太守は娘に「面白い句だが下の句はどうするね?」と訪ねました。
するとお嬢さんはもじもじしながら言いました。
「パパ、ここは素晴らしい土地で立派な人も多いでしょ。街に立て札を立てて、
下の句を募集したらどうかしら。下の句を作ることができるような人なら、
きっと賢い人でしょう? そうしたら、私……」
みなまで言わせず合点承知、太守は立て札をたてました。
《下の句を考えついた者を娘の婿とする》
レンコンを見てひらめいた!
土地の豪族や官僚の子弟たちは下の句を作ろうと頭をひねりましたが、
いっこうに思いつきません。一人の若者が下の句を考えながら川辺でぼんやりしていると、
大荷物を持ってよたよたと小さな橋を渡ろうとしているおじいさんがいたので、若者は
荷物を持ってあげました。おじいさんは感謝のしるしとして、泥の中からレンコンを抜いて
若者にあげました。それを見て若者はひらめきました。
池中栽藕 節節太白李長庚
(池の中で栽培されるレンコン
どの節もとても白い。中に長い根がある)
この句の「太白」はレンコンがとても白いことを表わすと同時に、太白金星のことを
連想させる役割を果たしています。太白金星には神話で「李長庚」という名前が
ついているため、句で「太白」のあとに「李長庚」が続きますが、
「李長庚」は、音の通じる「里長根(中に長い根がある)」という意味を導いています。
そういうややこしいダジャレ下の句と、匂い立つような蓮の花を持って、
若者は太守のところへ猛ダッシュ、太守の娘さんと結婚することができましたとさ。
めでたしめでたし。
三国志ライター よかミカンの独り言
最後になぞなぞをお一つ。
洞里点灯(ほらあなの中で明かりをともす)、これ誰~れだ?
答えは諸葛亮です。あざなの孔明が「あな・あかるい」ですから。
こういうなぞなぞが中国にあるんですよ。
以上、「日本豆腐」と「孔明点灯豆腐」のご紹介でした!
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