鎌倉時代を扱った映画は、町人文化や遊郭といった題材になりそうなものが多い江戸時代と比べると、やはり少ないといえるでしょう。しかし、マニアックな分、面白いものがあります。予告編を見るだけで、「ぜひ本編を見てみたい!」と思うものもあるでしょう。
今回は、そんな鎌倉時代を扱った映画の中からオススメの作品4つをピックアップしました。やはり、鎌倉時代の特色である、鎌倉新仏教に関する宗教者を扱ったものが多いです。
嵐が丘
この映画は、1988年に公開された日本映画で、監督は吉田喜重です。
世界の三大悲劇と称されるエミリー・ブロンテの長編小説を、日本の鎌倉時代に置き換えて作り上げた映画です。作品の評価については好き嫌いが分かれますが、ヒロインの絹役の女優である田中裕子の所作が美しく、鎌倉時代の本物の高貴な身分である女性を見ているかのような気持ちにさせてくれます。ストーリー自体は悲恋を題材しているため、ハッピーエンド…という内容ではありません。また、少し大人向けのシーンも登場するので、子どもがいる家族で鑑賞するのはあまりオススメできないかもしれません。
親鸞
親鸞を題材にしたこの伝記映画は、1960年に東映の製作・配給で上映されました。監督は田坂具隆でした。親鸞を神格化するわけではなく、ひとりの青年として彼の苦悩と成長を描いているところがこの映画の魅力的なところであるといえるでしょう。親鸞の他にも、個性豊かな登場人物が登場し、ストーリーを盛り上げるため、2時間半近い上映時間にもかかわらず飽きることがありません。続編である「続 親鸞」と話の内容が密接に繋がっているため、両方鑑賞すればさらに楽しめることでしょう。
禅 ZEN
この映画は、高橋伴明による脚本・監督のもとで2009年に公開された日本映画です。鎌倉新仏教のひとつである曹洞宗の開祖、道元禅師の生涯を描いています。歌舞伎役者の中村勘太郎が、凛としている道元を見事に演じています。キャスト達の表現力が素晴らしく、曹洞宗の教えがすっと頭に入ってきて理解することができるようになっています。また、音響効果も素晴らしく、思わず感情移入してしまう作品です。岩手や栃木でロケをしており、映画に登場する美しい風景も楽しむことができるでしょう。
日蓮と蒙古襲来
この映画は、1958年に大映京都によって製作されました。日蓮と北条時宗を中心に、蒙古襲来(元寇)を描いた作品です。製作担当が熱心な日蓮宗信者であったため、映画の細かいところにもこだわりが見られます。歴史的な事実に基づいた作品、というよりは、完全にオリジナルの内容となっており、日蓮がいかに偉大であったかということを伝えるストーリーになっています。製作費5億円をかけた超大作であり、華やかなキャスト、豪華なセット、そして膨大な数のエキストラが登場する作品です。日蓮のことを褒め称える内容であるため、客観性に欠ける部分もありますが、名演技の数々を楽しめる作品です。
鎌倉時代…まだまだ魅力はたくさん!
鎌倉時代を扱った映画はあまり多くはないというのが現状です。大河ドラマだと、1979年に東国武士や北条政子を題材にした「草燃える」というNHKのドラマがありました。鎌倉幕府初代将軍である源頼朝や、性格が正反対であった2代執権北条義時と3代執権北条泰時父子など、個性豊かな人物がたくさん登場する鎌倉時代を扱った映画がもっと増えてほしいものです。現在は、映画は限られた人だけでなく、誰でも編集して作れるような時代です。誰かが新しい鎌倉時代の映画を製作してくれないだろうか…と願ってやみません。
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