蔡瑁が赤壁で処刑されたなんて嘘?実は栄転して天寿を全う?[無能な悪役にされた史実の蔡瑁]

2022年11月22日


 

赤壁の戦い

 

 

三国志演義でも白熱の戦いを見せる赤壁の戦い。この戦いで周瑜は曹操と対決する中で、曹操の水軍の名将でもあった蔡瑁をどうにかしようと策を巡らせます。

 

 

蔡瑁

 

 

そして仕掛けた離間の策によって蔡瑁は曹操によって処刑され、赤壁で曹操の大敗する原因の一つとなりました。さてこの蔡瑁は三国志演義の例にもれず、正史とはだいぶ命運が違っています。今回はこの違いに注目すると共に、果たして蔡瑁はよくある三国志演義の被害者か否か、を考えてみましょう。

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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正史における蔡瑁

魔のトリオ攻撃が劉備を追いつめる!01 蔡夫人、張允、蔡瑁

 

 

正史における蔡瑁は、父の代から古くから荊州にいる一族であり、勢いも盛んな人物でした。劉表が荊州平定を行った後はその片腕として活躍することとなり、一族の家名も高まります。また蔡瑁の姉が劉表の後妻となったことも関係していたのでしょう。

 

劉琮

 

 

ただし姉が息子、劉ソウを産んだことによって劉表渦中に不穏さが巻き起こります。蔡瑁は姉や甥の張允と画策して劉表や荊州臣民を懐柔、劉ソウを世継ぎにするべく行動を開始。劉キはその不穏さを避けて江東の太守となっていましたが、父が危篤で帰郷するも既に蔡瑁らに家中は掌握されており帰郷できず、後継ぎは劉ソウがなることなりました。

 

 

曹操に迎え入れられる

曹操に降伏する劉琮

 

 

それを見過ごさないのが曹操です。曹操は荊州侵攻を行い、劉ソウはすぐに降伏。蔡瑁は曹操と旧知であったために高官として迎え入れられることになります。

 

大船団を率いて呉を攻める王濬(おうしゅん)

 

 

元々荊州の地は蔡瑁にとって大きな地盤、しかも長江付近の土地に詳しく、水軍の諸法にも精通していた蔡瑁は魏にとって大きい戦力となりました。その後、蔡瑁は長水校尉漢陽亭侯に取り立てられ、かなりの高位に就いたようです。

 

 

三国志演義の蔡瑁

魔のトリオ攻撃が劉備を追いつめる!05 蔡夫人、張允、蔡瑁、劉備

 

 

では三国志演義の蔡瑁を見ていきましょう。大まかな流れは正史における蔡瑁と同じですが、劉表の元に身を寄せる劉備を警戒し、暗殺を考える話が挿入されています。実際に暗殺を行うも、劉備は的蘆に乗っていたおかげでこの窮地を脱出しました。

 

 

周瑜

 

 

そして曹操配下に加えられるも、蔡瑁を警戒した周瑜の離間の策によってその最期を迎えます。因みに姉とその息子の劉ソウは曹操らに暗殺されているのですが、特に何もなく曹操に仕えているというちょっと疑問に思う展開が気になる所でしょうか。

 

 

一族まとめて引き立て役?

処刑を下す曹操

 

 

蔡瑁が謀反を疑われて曹操に処刑されてしまうのは前述した通りですが、これは赤壁で曹操が敗北してしまう大きな原因の一つとなっています。また蔡瑁の処刑を利用して、一族である蔡和と蔡中が埋伏の毒となって呉に投降……するも、周瑜と諸葛亮にあっさり見抜かれて逆に利用されるなど、これもまた曹操が敗北する原因の一端となっていますね。

 

三国志演義_書類

 

 

そんな蔡瑁ですが、三国志演義では悪役として描かれています。しかし蔡瑁は果たして悪役だったのでしょうか?

 

 

蔡瑁は悪役だったのか

正史三国志_書類

 

 

蔡瑁のやったこと、実績を正史準拠で見ていくと「もともと力を持っていた豪族」「劉表の荊州平定後から尽力して仕える」「曹操への降伏を進言」「劉キを追い出した」となります。

 

献帝を傀儡化する曹操

 

 

とはいえこの時点で曹操は漢王朝の代理人みたいなものですから、曹操に降伏するのはある意味で当然のことです。また劉キを追い出したことに関して言うと、この時点で劉キは劉備と結託している、つまり漢王朝でもある曹操と対立していると考えると、むしろ荊州のことをよく考えた行動ではないでしょうか?演出が加えられている三国志演義ではなく、正史で追っていくと蔡瑁の行動は決して悪ではないと思います。

 

 

蔡瑁の行動の一貫性

魔のトリオ攻撃が劉備を追いつめる!07 蔡瑁、劉備

 

 

 

三国志演義で見ていくと権力を欲しいままに行動していく良く分かりやすい悪人のように見えますが、正史で見てくとこの時代の荊州と言うのは群雄割拠の時代ということもあってまだまだ不安定。

カイ良、カイ越、蔡瑁に初めて会う劉表

 

 

荊州に秩序を取り戻すためには皇族であった劉表を盟主に据えるのは妥当であり、その劉表家のことを考えれば曹操や漢王朝に逆らわないように行動した蔡瑁の行動は、的を射ているものです。敢えて言うなら曹操が赤壁で負けたから荊州がその後も戦乱真っただ中になってしまうのですが、それは蔡瑁には分からなかったことなのでどうしようもないことでしょう。

 

 

蔡瑁は三国志演義の被害者か否か

三国時代の船 楼船

 

 

 

個人的に言うと、蔡瑁は三国志演義の被害者ではありません。多少の悪役化はされていますが、水軍都督として非常に優れている人物と言われていますし、周瑜からも高い評価を受けています。だからこそ周瑜は離間の策によって蔡瑁を取り除いた訳ですから。

 

 

呉蜀赤壁の戦い

 

 

 

むしろ敵役でありながら非常に高い評価を受けていると言えると思います。もしかしたらここで「そんなすごい奴だったのに曹操は処刑しちゃった」「だから赤壁で負けちゃった」という理由付けのために処刑されたのでは……が、それでも他の演義の被害者たちほどは能力を下げられてはいないと思うのですが、どうでしょうか?

 

 

三国志ライター センのひとりごと

三国志ライター セン

 

 

個人的に蔡瑁は曹操の悪役化をするための一つのコマであると思っています。優秀な人物なのに敵の策に嵌ってまんまと処刑する、しかも今までの功績もあるのに……曹操酷い!という感じですね。そしてそんな優秀な人物がどうやって退場するのかも、実は曹操が処刑することですんなりいくのです。そういった役割として蔡瑁は非常に便利だったのでは?と、いういつもの筆者の妄想でした。

 

参考:襄陽記

 

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セン

両親の持っていた横山光輝の「三国志」から三国志に興味を持ち、 そこから正史を読み漁ってその前後の年代も読むようになっていく。 中国歴史だけでなく日本史、世界史も好き。 神話も好きでインド神話とメソポタミア神話から古代シュメール人の生活にも興味が出てきた。 好きな歴史人物: 張遼、龐統、司馬徽、立花道雪、その他にもたくさん 何か一言: 歴史は食事、神話はおやつ、文字は飲み物

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