皆さんは「チャーハン症候群」という言葉をご存知でしょうか?この言葉はフライドライスシンドロームと呼ばれ海外のSNSを中心に話題になっています。ただ、決して良い言葉ではなくセレウス菌による食中毒を指しているのです。今回は日本でも十分に起こりうるチャーハン症候群について解説します。
ご注意:この記事はチャーハン症候群の概要について解説しています。チャーハン症候群を引き起こすセレウス菌食中毒については、なんら医学的知見を与えるものではありません。あらかじめご了承下さい。
チャーハン症候群とは?
チャーハン症候群とはパスタやチャーハンなど調理後の穀物料理を室温で長時間放置したことでセレウス菌が増殖して食中毒を起こす事を言います。このセレウス菌、厄介な事に増殖しても異臭がせず、レンジで再加熱しても死なないという事で海外のSNSユーザーを恐怖のどん底に叩き落としたそうです。高温多湿の日本では、常温で数日も食べ物を放置しては危険という事は体感として分かりますが、海外では乾燥している地域もあり、チャーハン症候群が発生しても気づきにくいようですね。
海外では死亡事例もある
海外では、常温で5日間放置されたチャーハンを食べた20歳の学生が、下痢と嘔吐を繰り返した後、肝臓が壊死して臓器不全に陥って死亡した事例があるそうです。この事例がSNSで拡散し、チャーハン症候群として一気に定着しました。こう聞くと怖いですが、セレウス菌自体は日本にも存在する土壌細菌で、身近な存在であり感染すると必ず重篤な症状になるわけではないようです。
セレウス菌の毒性はそこまで強くない
NIID国立感染症研究所のホームページによると、セレウス菌感染症は、ほとんど食中毒の形をとり、嘔吐型と下痢型があるそうです。ただ、その発生数や患者数はそれ程多くなく、1983 年から1999 年までの17 年間に発生した食中毒総数19937の中で、セレウス菌食中毒は201 、患者数は7697 で、いずれも1%程度です。発生規模も大体小規模で、時期的には他の食中毒同様、夏に発生しています。嘔吐型も下痢型も患者はいずれも軽症ですみますが、抵抗力が弱い人が下痢型のセレウス菌感染症に罹患すると、急性肝不全を起こし、死亡してしまう事もあります。
電子レンジでは殺菌できない
このように重篤な症状に陥る事は少ないセレウス菌食中毒ですが、厄介なのはセレウス菌の薬剤や熱に対する耐性です。セレウス菌は芽胞を形成し90度の温度で60分加熱しても失活しません。また芽胞状態ではアルコール殺菌にも強くなります。つまり、電子レンジで短時間チンする程度ではセレウス菌食中毒は阻止できないのです。セレウス菌食中毒の対策としては、一度に大量の米飯や麺類を調理して作り置きしない事や、穀類が原料の食品は調理したら保温庫で保温するか、小分けにして8℃以下で低温保存する事が推奨されています。
まとめ
セレウス菌食中毒を引き起こすセレウス菌は土壌に潜んでいるポピュラーな細菌です。セレウス菌食中毒は、主に米飯や穀物類をセレウス菌が汚染する事で発生し、症状には下痢と嘔吐がありますが、食中毒全体から見ると発生事例は1%程度で、ほとんどが軽症で回復します。ただし、セレウス菌は熱にも薬剤にも強く、増殖しても無味・無臭であり事前に気が付く事が難しい感染症でもあります。対策としては、米飯や穀物を使用した調理食品を8度以上の温度の中に長時間置かない事で、作り置きした時は、小分けにして冷蔵庫に保管するなどの対策が必要です。
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