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[山海経の世界]通常の人々は一切不在の怪物図鑑

2024年2月6日


山海経(書類)

 

 

皆さんは中国の歴史を探ろうと思ったらどの書物をまず手に取りますか?

 

正史三国志_書類

 

 

三国時代がお好きな皆さんはやはり『三国志』を手に取るでしょうし、それ以外の時代を知るのにもそれぞれの王朝の名を冠した正史をめくるのが当然といえば当然でしょう。しかし、歴史書に記さていないもっと古い時代のことを知りたいと思ったらどうすれば良いのでしょうか?

 

祁山、街亭

 

 

そのようなとき、私たちにヒントを与えてくれるとされているのが『山海経(せんがいきょう)』という書物です。今回は『山海経』についてご紹介したいと思います。

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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一応地理書の体裁をとっている『山海経』

山海経(妖怪)

 

『山海経』は基本的に山や海を基準として地域を区切ってその地域にまつわる物事を記した書物です

 

その内容は中国国内だけにとどまらず、中国国外どころか海の向こうのことまで網羅されているということでけっこうボリューミー。その上、絵地図まであったということですから、世界地図的な要素の強い書物だったようです。

 

『山海経』を著されたとされるのは夏王朝の創始者とされる()であるなどと言われていますが、その真偽のほどは定かではありません。もしもこれが本当なら、紀元前19世紀頃に『山海経』が既に存在していたということになりますね。

 

宋代の公務員試験である科挙

 

しかし、それが本当だったとしても、そんな古い書物がその当時の姿のまま残れるはずもなく…。数百年の時を経て前漢の学者・劉歆(りゅうきん)よって校訂されたものが現在私たちが読んでいるものであると言われています。しかし、その後もしばらくは巻数が増えたり減ったりしてなかなか1つの形に定まらない曖昧な存在だったようです。

 

 

 

謎の生き物が多数登場!

異民族に好かれる董卓

 

『山海経』には動物がたくさん登場するのですが、どれもこれも「カオス」の一言。そんなのに道端でバッタリ出会ったら思わず死んだふりをしたくなってしまうようなのばかりです。

 

人間の顔が9つも付いている虎・開明獣(かいめいじゅう)や、体長が千里もあるという人の顔が付いた赤い蛇・燭陰(しょくいん)、1つ目で尾を3つ持つ狸のような生き物・(かん)など。…できればお会いしたくないですよね。しかし、カオスなのは動物だけではありません。人も何かおかしいのです。

 

曹操と虎豹騎

 

一見普通の人だけれど、胸に穴が空いているという貫匈人(かんきょうじん)なる人種や、人の姿だけれど豹の尾が付いていて下半身が虎だったという西王母(せいおうぼ)という仙女、蛇の体に人の顔が付いている女媧(じょか)などなど…。

 

まぁ彼らのほとんどは半分神様みたいなものだったようですが、それにしたってツッコミ所満載です。何だかグロテスクなのばかりだなぁ…と思いますが、実は私たちにとって結構馴染み深い妖怪も『山海経』に登場しているのですよ

 

例えば、9つの美しい尾を持ち、時々美女に化けて人を騙すという九尾狐が挙げられます。

 

天狗に憧れる細川政元

 

また、天狗もそのうちの1つなのだとか。『山海経』に描かれる天狗は私たちがよく知る鼻の長い山伏の姿とは異なり、空を飛ぶ犬の姿をしています。九尾狐や天狗になら会ってもいいような気がしますね。

 

 

陶淵明も『山海経』を愛読

陶淵明も『山海経』を愛読

 

山海経(せんがいきょう)』という不思議な世界観を持つ書物に魅了された人の数を知ることは難しいですが、その中でも特に有名なのは、南朝宋(なんちょうそう)の時代に活躍した隠逸詩人・陶淵明(とうえんめい)でしょう

 

彼は「読山海経(とうせんがいきょう)」と題し、13(へん)もの連作詩(れんさくし)()んでいます。そして、その詩の第一首(いっしゅ)では、『山海経』について次のように(うた)っています。(しゅうおう)(でん)汎覧(はんえつ)し、山海(さんかい)()流観(りゅうかん)す。俯仰(ふぎょう)して宇宙を(しゅう)くす、楽しからずして復た()如何(いかん)

 

穆天子伝(ぼくてんしでん)』を読んだり『山海経』の挿絵を眺めたりする。それだけで宇宙の全てを知った気になれる。これが楽しくないのなら、どんな楽しみがあるというのだろう。

 

穆天子伝(ぼくてんしでん)』というのは、『山海経』と同じように神怪世界が描かれた書物で、周の穆王(ぼくおう)が各地を旅したときに出会った不思議な物事が描かれているのだそう。陶淵明は『山海経』の世界に思いを馳せ、その想像の翼を自由に広げています。俗世を疎んでいた陶淵明にとって、『山海経』に描かれていた古代中国の世界というのはまさに理想郷だったのかもしれませんね。

 

 

三国志ライターchopsticksの独り言

三国志ライター chopsticks

 

中国には「山海経GO」というなんだか既視感満載のアプリがあるそうですね。出てくるポケ…妖怪たちは『山海経』に出てくるものばかりなので、『山海経』について勉強するには最適なアプリと言えるかもしれませんね。

 

 

▼こちらもどうぞ

山海経(せんがいきょう)って何?|中国古代の神話世界

 

 

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清朝考証学を勉強中。 銭大昕の史学考証が専門。 片田舎で隠者さながらの晴耕雨読の日々を満喫中。 好きな歴史人物: 諸葛亮、陶淵明、銭大昕 何か一言: 皆さんのお役に立てるような情報を発信できればと思っています。 どうぞよろしくお願いいたします。

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