人間の最大の願いは不安を解消し安心を得る事だとディオ様は仰いました。まさにその通りで、人は将来の不安を解消すべくスポーツをし健康食品を食べ、貯金をし生命保険に入り、少しでも将来不安を解消しようとします。しかし最新の科学は、人が抱える漠然とした不安を司る脳の領域を特定し、将来的には人為的に不安を消す事も不可能ではなくなりそうです。
不安を産み出す手綱核
東北大学の研究によると、人間が感じる漠然とした不安を産み出すのは、海馬の下にある手綱核という部分だそうです。この手綱核は脳の原始的な部分で、ほぼすべての脊椎動物にみられます。また、手綱核の中にはアストロサイトという脳細胞があり、こちらが脳内の情報首里や神経伝達物質の濃度の調節に関与している事がわかりました。そのため、東北大学の研究チームは、アストロサイトが生物の漠然とした不安に関係しているのではないかと考え、マウスによる実験を行いました。
マウスを使った実験
マウスによる実験では、マウスを薄暗い部屋とガラス玉が敷き詰められた明るい部屋の前に置いて、手綱核の脳波がどう変化するのかを見ました。ネズミは薄暗い部屋を好み、ガラスと明るさに不安を感じるので、ガラス玉が敷き詰められた明るい部屋にマウスを置くと、手綱核のアストロサイトにおいて不安状態を示すシータ波の活動が増幅します。逆に薄暗い部屋にマウスを置くと、シータ波の増幅は起こりませんでした。そこで研究チームはマウスの脳に電極を取り付けて、薄暗い部屋に置き人為的にシータ波を流しました。するとマウスは薄暗い部屋を嫌がり、明るいガラス玉が敷き詰められた部屋に長く居るようになったのです。この実験により、マウスの脳波にシータ派を送り込む事で人為的に不安を与える事が可能である事が証明されました。
血流をアルカリ化すれば不安が消える
マウスはガラス玉の敷き詰められた明るい部屋にいると、手綱核への脳の血流量が増加し、同時にアストロサイト内のpH値(水素イオン指数)が酸性化している事が分かりました。そこで研究チームは、アストロサイト内のpH値をアルカリ化すれば、マウスの不安を解消できるのではないかと仮定し実験を開始します。今度は、光刺激を用いた特殊な技術で、ネズミの手綱核のアストロサイトの細胞内を酸性からアルカリに変化させました。するとマウスは不安を感じるガラス玉を敷き詰めた明るい部屋でも平気で居座るようになったのです。
人の漠然とした不安を消す技術が生まれるかも
このマウスの実験によって、脊椎動物は手綱核のアストロサイト内の活動で不安感を感じている事が特定され、また手綱核のアストロサイト内の血流量が増えて酸性化すると、漠然とした不安を感じやすく、逆にアストロサイト内がアルカリ性になると不安が抑えられる事が分かりました。現時点ではマウスの実験結果ですが、将来的には漠然とした不安に苛まれる人々にとって、不安を解消する技術になるかも知れません。
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