竹林の七賢とは、三国時代の末期に、酒を飲んだり清談を行なったりと交遊した、七人の人物を指しています。彼らは魏の末期で簒奪を行っている司馬一族に、歯に衣着せぬ言動で批判をした人たちとして知られています。彼らは、社会批判を行っていたということの他に数々の奇行でも知られています。劉伶(りゅうれい)は字は伯倫(はくりん)であり、彼は三国時代の文人で、竹林の七賢の一人に数えられています。彼は数々の奇行でその名を後世にまで知らしめています。今回は、彼のその奇行の数々をご紹介します。
その華麗でシュールな移動姿
劉伶(りゅうれい)は身長が140cmと極めて低かったそうです。彼は手押し車に胡坐をかいて座り、車を引かせて移動しておりました。酒が大好きだった彼は、手には酒壷を抱え行く先々で酒をあおっていました。小柄な男が、酒壷を抱えて手押し車に乗っているなんて、想像するだけでかなりシュールな光景です。このまま、魏のマスコットキャラになれなくもなさそうです。また、手押し車の後ろには鋤(すき、スコップのこと)を持った男を連れて、自分が死んだらそこに埋めるように、と埋葬場所を指定していたそうです。お酒のせいで、急死するような事態を想定していたならば納得ですが、暴漢や賊に襲われたり、どこからともなく大岩が落ちて来たりその他の天災に遭遇したら、後ろのスコップ男もただでは済まないと思いますが、一体どんな理由で死ぬことを想定していたのでしょうか?
全裸生活! とにかく明るい劉伶
劉伶(りゅうれい)の奇行で最も有名なのは、素っ裸で生活していることでした。素っ裸で生活しているため、近所の人から奇異の目で見られます。
子供「ママー。あの人なんで裸なのぉ~」
母「見ちゃいけません。」
このように教育上、あまり良くない姿で劉伶(りゅうれい)は生活していました。ある時、他人が劉伶(りゅうれい)を訪ね、そのことをとがめます。
他人「服ぐらい着ろよ!恥ずかしくないのかよ!」
劉伶(りゅうれい)「安心してください。履いてます。」
他人「いや、どう見ても裸だろう。」
劉伶(りゅうれい)「私は、この天地を我が家と思い、この部屋をふんどしと思っています。
この上なぜ服等着る必要があるのでしょうか?」
この時点で???ですが、劉伶(りゅうれい)は続けます。
劉伶(りゅうれい)「逆に、君らは何故私のふんどしの中に入り込むのです?
そちらこそ、そのような振舞い、恥ずかしくないのですか。」
一見、ただの頭のおかしな人にしか見えませんが、天地を我が家と思うその視野は、何か別のモノを見据えていたかもしれません。周囲の皆にも裸の劉伶(りゅうれい)のモノが見えていますが。
酒好き劉伶、妻に怒られる
劉伶(りゅうれい)は酒好きでも知られています。彼はいつも酒浸りでした。彼の妻はそのことをいつも心配していました。ある朝、彼は二日酔いでひどくのどが渇いたので、迎え酒がほしくなりました。
劉伶(りゅうれい)「のどが渇いたから、酒を持ってきてくれ。」
劉伶(りゅうれい)の妻は酒壷を叩き割り、酒器を壊して泣き出しました。
劉伶(りゅうれい)の妻「昨日もあんなに飲んでたでしょ。飲み過ぎです!体に良くありません!! もうお酒はやめてください!!!」
劉伶(りゅうれい)「急にそんなことを言われても、すぐには止められないよ。」
劉伶(りゅうれい)の妻「いつも言ってるでしょ! もうきっぱりと酒を断ってください。」
劉伶(りゅうれい)「わかったよ。でも、自分の力では到底禁酒なんてできないから、神の力を借りるとするよ。
神に祈って誓いを立てて酒を断てば、きっと禁酒できると思う。
すぐに御供え物のお酒と肉を用意してくれ。」
劉伶(りゅうれい)の妻「・・・ではその通りに致しましょう。」
こうして、劉伶(りゅうれい)は禁酒することになりました。
酒好き劉伶、禁酒に挑戦
劉伶(りゅうれい)の妻は神前にお酒と肉を備えました。
劉伶(りゅうれい)の妻「さあ、準備ができましたよ。二度とお酒は飲まないと誓いを立ててください。」
劉伶(りゅうれい)は跪き、誓いを立てました。
劉伶(りゅうれい)「天はこの劉伶(りゅうれい)を生みたまい、酒をもって世に名を出させてくださいました。
一度に一斛を飲み、五斗を迎え酒としてくださいました。天に報いるため、婦人の言葉等決して聞きませんぞ」
劉伶(りゅうれい)の妻「はあ? 何言ってるんですか!? えっ!!? ちょっと!!!」
呆気にとられる妻を意に介さず、神前の酒を飲み、肉を喰らうとまた酔っ払って寝てしまいました。
彼は、悪知恵を働かせ見事に酒を飲むことに成功しました。
なお、竹林の七賢は社会批判をする等、一応目的をもって活動していますが、
この件に限っては、完全に才能の無駄遣いです。
三国志ライターFMの独り言
劉伶(りゅうれい)はなぜこのような数々の奇行をしたのか、中々凡人には理解しがたいところです。竹林の七賢である以上、凡人の至ることの無い奇抜な発想を持つ方々の一人であったので、何か理由はあったと思います。死に場所を指定していたのは、社会批判が原因で殺害されることを懸念していたのでしょう。ふんどしの中に云々の話は、「天地は我が家」と述べているあたり、無限に広がる広大な天地すらも身近の自分の家のごとく考えていた彼は、この世の遥か遠くまで展望していたのでしょう。最後のお酒は・・・・・・ただ飲みたかっただけですね。彼にとっては、「酒飲み」としての自分の役割を果たしたまでなのかもしれません。しかし、当時は意外と女性にも相手を選ぶ権利は多少なりとも在ったようなのですが、劉伶(りゅうれい)の奥さんは何でこんなのと結婚したのか、とか考えてしまわなくもないですね。
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