夏目漱石は、当時の成人男性の平均よりもやや重い脳を持っていたようです。しかし、漱石の脳の重さよりも注目すべきは、彼の前頭葉が発達していたことです。これは彼が頭脳明晰で頭の回転が速かったことを意味します。しかし、漱石の場合は例外であり、一般的に人々の脳の大きさにはそこまで大きな違いはないのではないかと思われるかもしれません。しかし意外なことに、人間の脳はわずか数世代で急速に大きくなっていることが分かりました。
人間の脳は若い世代ほど大きくなっている
人間の脳が世代を重ねるごとに大きくなるという考えは驚きかもしれませんが、研究によればそれは事実です。1925年から1968年に生まれた3226人の参加者の脳MRIデータを用いた実験では、出生年代によって頭蓋骨や脳の容積に差があるかどうかを調べました。この実験は、1999年から2019年の間に実施され、参加者の平均年齢は57.4歳でした。
脳の大きさに有意な差が見られた
実験の結果、1930年代に生まれた人と比較して、1970年代に生まれた人の方が頭蓋内容積が6%、白質の体積が7%、海馬の体積が5%、脳表面積が15%大きかったことが分かりました。これにより、脳の容量は何百万年もの進化の過程で徐々に大きくなるばかりでなく、わずか数世代で顕著な差が現れるほど大きくなる可能性が示唆されました。
アルツハイマー病患者の減少と脳の大きさの関係
しかし、脳が大きくなる事にはどのような意味があるのでしょうか? 研究グループによると、アルツハイマー病患者の減少と脳の大きさは関連しているそうです。アメリカでは現在、約700万人のアルツハイマー病患者がおり、その数は2040年までに1120万人を超えると予測されています。しかし、人口比で見ると、アルツハイマー病患者の割合は減少しており、1970年代から10年ごとに約20%減少していることが過去の研究で明らかになっています。
大きな脳は認知症の影響を軽減する
脳の構造が大きくなることは、脳の発達や脳の健康の向上を反映している可能性があります。そして、大きな脳は脳の予備能力が大きいことを意味し、加齢に伴う脳疾患であるアルツハイマー病や関連する認知症の影響を軽減する可能性があります。このまま脳の健康状態が向上し、脳が大きくなっていくと、アルツハイマー病や認知症の患者数が今後も減少する可能性があります。
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