2024年7月26日のパリ五輪まで50日を切りました。世界中で代表選手の内定が進む中、開会式とトライアスロンのオープンウォータ―スイミングがおこなわれる予定のセーヌ川の水質に赤信号が点灯しています。国境環境NGO団体の水質調査によるとセーヌ川から道頓堀の6倍もの大腸菌が検出されたのです。
実は1923年から遊泳禁止のセーヌ川
パリ市長が6月23日のオリンピックデーに泳ぐと豪語するセーヌ川は、コンコルド広場やエッフェル塔周辺、市庁舎前を蛇行して流れるパリの象徴です。当然、パリ五輪の施設はセーヌ川に沿って建設されているのですが、セーヌ川は水質汚染が進んでいて大正時代の1923年より遊泳禁止になっていて、泳ぐと軽微ではありますが罰金を取られます。
道頓堀の6倍以上の大腸菌を検出
セーヌ川の水質汚染はパリ五輪前から指摘されていて、国境環境NGO団体が5月22日におこなった水質調査によれば、トライアスロン水泳のスタート地点であるアレクサンドル3世橋付近の水の水質調査で100ミリリットルあたりの大腸菌が3430検出されました。これは、道頓堀の100ミリリットルあたりの大腸菌検出数、540の6倍以上にもなります。大腸菌は人間の体内にいる細菌で病原体ではありませんが、多くなると中耳炎や皮膚炎、腸炎を引き起こします。ワールドトライアスロンの基準では水質については、それほど厳しくないようですが、それでも大腸菌は100ミリリットルあたり1000を超えてはいけないとしていてセーヌ川の大腸菌は、こちらをぶっちぎっています。
水質汚染のカギは大雨
実はセーヌ川の水質汚染は晴れている時は、ワールドトライアスロンの基準値に収まるようです。では、どうして雨が降ると基準値を超えてしまうのかと言うと、これは、パリの下水処理施設の問題でした。パリ市の下水道システムは、19世紀末に造られた古いモノで汚水と雨水が同じ管に入る「合流式」を採用しています。晴天時、汚水は郊外の汚水処理場に流されて処理されていますが、大雨になると街の通りから雨水が流入して処理施設が満杯になるので洪水を防ぐためにポンプを使ってセーヌ川に放出されています。つまり、大雨が降ると汚水と雨水が一緒くたにセーヌ川に流されるので、水質汚染が一気に進むのです。
パリ五輪の成功は天候次第
パリ市も水質汚染を減らす為に、巨額の予算を投じていますが、それが急激に効果を表すわけもなく、パリ五輪の成功はパリの天候次第という事であるようです。
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