ロシア軍がウクライナ北東部で戦端を開いてより、5週間が経過しました。現在、戦闘の中心地は国境付近の小さな都市、ボウチャンシクですが、そこでは走行車両に守られないまま、ドローンや大砲に倒れるロシア歩兵が大勢いるようです。
歩兵の命が安いロシア
開戦より2年が経過した現在、ロシア軍の累計死傷者は50万人を超えたというデータがあります。それでも、ロシアには無尽蔵に近い人的資源があり、毎月3万人の新兵を徴兵すると雑な訓練を施して前線に投入しています。これは毎月の兵力の損失を何とか補えるレベルであり、そのお陰でロシアは新たな戦端を開くことも可能で、ボウチャンシク攻防戦も、このような豊富なロシア兵に支えられています。供給力が継続する限り、ウクライナ戦争は容易には終わらないでしょう。
供給が下回る走行兵員輸送車
しかし、多くの歩兵を前線に投入できる一方で、ロシアの北東部侵攻が足踏みしているのも事実です。その大きな理由はロシア軍司令部がボウチャンシクに歩兵を送り込むだけで装甲車を送り込まないからです。ロシアには、BTR-82装甲兵員輸送車があり、歩兵をガードしながら戦いを進められる筈ですが、司令部はそれらの装甲兵員輸送車の投入を出し渋っています。この背景には、ロシア軍が装甲兵員輸送車と歩兵戦闘車両を4400両近く撃破されている点が挙げられています。逆にロシアの産業界が新規生産できる装甲兵員輸送車と歩兵戦闘車両は年間1000両でしかなく、破壊に対し供給が追い付いていません。
アメリカの支援再開でロシアのダメージが顕著に
一方でウクライナには、再び米国から砲弾が届くようになり、国内で自爆型ドローンの調達も増やし、監視ドローンで発見したロシア軍車両を片っ端から破壊しています。逆風を受けて、ロシア軍の指揮官が装甲車両の温存に舵を切っているのは明らかです。ところが歩兵だけはロシア領内から次々送り込まれているわけで、ロシア軍の前線司令部は安い歩兵の犠牲が増えても、貴重な装甲車両を温存したい意図が働いているようです。