戦いでいいところまで行っても、軍師不在のためにいつも残念な境遇に甘んじていた劉備(りゅうび)さん。人相見の水鏡(すいきょう)先生に「伏龍(ふくりゅう)、鳳雛(ほうすう)のいずれかを得れば天下を安んじることができる」と言われ、伏龍こと諸葛孔明(しょかつこうめい)をいそいそと訪ねて行ったのが、有名な「三顧の礼」です。
田舎暮らしを楽しんでいた孔明を拝み倒して軍師になってもらったというのが表向きのストーリーですが、実際はどうだったんでしょうか。三国志演義に書いてある詩から読み解いてみますよ!
農夫熱唱へんてこソング
孔明の友人・徐庶(じょしょ)と水鏡先生から猛プッシュを受けてその気になり、孔明の住まう隆中(りゅうちゅう)を初めて訪ねて行った劉備。手前の山の麓で数人の農夫がこんな歌を歌っているのを耳にします。
蒼天は円蓋の如く 陸地は棋局に似たり世人は黒白に分れ 往来して栄辱を争う栄える者は自ずから安々たり 辱めらるる者は定めて碌々たらん南陽(なんよう)に隠者あり 高眠して臥せども飽かず
劉備「その歌は誰の作じゃな」農夫「臥龍(がりょう)先生の作られたものでござります」ということだそうですが、この歌がアヤシイ!臥龍先生、どんな魂胆があってこんな歌をわざわざ近所の農夫に教え込んで歌わせていたんでしょうね。農夫が喜んで歌うような歌詞じゃないですよ……
情熱のツンデレソング
歌の内容は、こんなところでしょうか。天はまあるく一つなのに、地上は碁盤みたいに群雄が割拠して人々は碁石みたいに黒白に別れて勝ち負けを競っている勝ち組は安泰、負け組は人の下でつまらない思いをしてるでしょうね南陽に隠者がいますがまだ世に出る気はありませんのであしからずw
これ、100% 孔明の売り込みの歌ですね。人の下でつまらない思いをしている負け組の劉備さん、臥龍はここで寝てますよ!べつに起こしてもらうのを待ってなんかいないからねっ!起こすなよ、起こすなよ、絶対に起こすなよ!
愛の告白ソング
さて、こうして隆中を訪ねたものの、お留守だったり人違いだったりと二度も空振りをして出直した劉備さん。三度目の正直で、とうとう臥龍先生ご在宅の庵にたどり着きます。ああやっと会える……と思ったら先生お昼寝中。
臥龍先生に気を遣って起きるまでじっと待つことに。待つこと三時間。ようやく目を覚ました臥龍先生は、こんな詩を口ずさみました。大夢誰か先ず覚む 平生我自ら知る草堂に春睡足りて 窓外に日は遅々たりこの詩の意味は最初に夢から覚めるのは誰か、私はふだんから知っている。庵で眠るのはもう充分。窓の外には太陽のごとき名君が待って下さっている。って、この詩、明らかに「劉備どの、お待たせしました! こうも丁重な態度をとって下さったからにはこの孔明もう起きちゃいますよ!」と言ってしまっていますよ!
三国志ライター よかミカンの独り言
ということで、孔明は最初から劉備のために起つ気まんまんだったことが詩から読み取れました。
三度も訪問させてもったいつけたのは、きっと自らに箔を付けるためですね。呼ばれてすぐにひょいひょいと仕えるよりも、拝み倒されてしぶしぶ仕官する形をとるほうが、仕官後も大事にしてもらえておトクです。さすが孔明さん、賢いです。現代を生きる私たちも、仕事や恋愛にこの孔明式駆け引きを応用すれば自分の有利なポジションを占められそうです。これはイタダキだ!
▼こちらもどうぞ