中国の北京に旅行に行くのであれば、足を運んでほしいのが琉璃廠。琉璃廠は中国一の本屋街で、様々な漢籍が所狭しと並べられています。フラッと立ち寄った適当な本屋さんでも「中国の本ってこんなにあるの…?」と目を真ん丸にしてしまうほどです。
そんな中国の本ですが、中国最大の解題目録『四庫全書総目提要』によれば春秋戦国時代から清朝初期に至るまで実に17万2860巻もの書物が存在しているのだそう。一生かかっても読み切れそうにありませんね…。しかし、一時代、中でも重要とされる書物に限れば読破することは可能です。というわけで今回は漢代に編まれた書物の中でも読む価値が高いとされる書物についてご紹介します。
この記事の目次
漢代といえばやっぱり『史記』『漢書』!
漢代の本の中でも重要なものといえばやっぱり歴史書。中でも、後に正史とされる『史記』と『漢書』の存在は忘れてはいけません。
『史記』は前漢7代皇帝・武帝に仕えていた司馬遷が著した歴史書です。神話の時代から武帝の時代までの出来事を皇帝を中心に紀伝体で描いています。それまでの歴史書といえば『春秋』のように年代順に物事を記す編年体がオーソドックスだったので、司馬遷は歴史書の常識に一石を投じたことになります。
そして、司馬遷の『史記』を参考にしつつ、より簡素に前漢代の歴史を著したのが後漢の班固による『漢書』です。複数の王朝の歴史を著した『史記』を通史と呼ぶのに対し、前漢代の歴史に限って表している『漢書』は断代史と呼ばれています。どちらも中国史を勉強する人にとって必読書と言えるものです。
多才な劉向による名著『説苑』『列女伝』『戦国策』
前漢代に活躍した人の中でも有名なのは劉向でしょう。彼はとても多才な人で、様々な分野で功績を残しています。その功績のうちでも『説苑』『列女伝』『戦国策』といった書物は特に有名です。『説苑』ははるか昔の伝説の皇帝の時代から前漢代に至るまで多くの故事や逸話を集めた説話集で、天子を戒めるために編まれた書物であると言われています。
『列女伝』は昔活躍した女性たちの姿を描き出し、理想の女性像を世の中の人々に提起した書物です。
最後に『戦国策』ですが、戦国時代に活躍した遊説家たちの活躍を国ごとにまとめた書物となっています。
ちなみに、劉向には他に後に目録学として発展する宮中にある書物の解題書である『別録』という著書もありますよ。
経書の研究も発展!『白虎通義』
漢代といえば儒学が官学となった時代。そのため、漢代には儒学の経典に関する研究や議論が積極的に行われていました。その研究や議論についてまとめた書物こそが班固によって著された『白虎通義』です。
当時は焚書坑儒が行われた後口伝で伝えられた今文の経書と運よく焚書坑儒を免れて後の人の手に渡った古文の経書がありました。『白虎通義』では今文と古文との争いの様子も記録されています。経書研究に取り組む人にはぜひ読んでほしい書物です。
専売制度にもの申す!『塩鉄論』
塩や鉄の専売が始まったのは漢代であるということを世界史で習ったという人もいるでしょう。しかし、塩や鉄の国による専売はそれまで塩や鉄を売って生計を立てていた商人たちにとって大打撃でした。
そのため、商人をたすけるべく専売をやめるべきか財政を安定させるべく専売を続けるべきかで激しい議論が度々交わされました。その討論の様子を記録したのが桓寛による『塩鉄論』です。経済について学んでいる人にも是非読んでもらいたい一冊となっています。
医学書もたくさん!『黄帝内経』『神農本草経』『傷寒論』
漢代は医学が発展した時代でもあります。そのため、医学書もたくさん編まれた時代でもありました。その代表的なものとして挙げられるのが『黄帝内経』『神農本草経』『傷寒論』の3つの書物。『黄帝内経』は陰陽五行説に則って病気のことやその治療法が記された書物です。
『神農本草経』は薬となる植物や金属などの物質についての解説書。
そして、後漢代から三国時代にわたって張仲景が編纂した『傷寒論』は特に伝染病の治療法について記された書物となっています。いずれも後の医学に大きく貢献した書物です。
三国志ライターchopsticksの独り言
漢代には後世の人々に大きな影響を与えた書物がたくさん生み出されました。全てとはいかないかもしれませんが、皆さんも是非これらの書物を手に取ってみてくださいね。
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