北野武監督が送る大型戦国時代劇「首」の興行収入が12月17日時点で9.9億円に留まり、ランキングも10位に落ちている事から2017年のアウトレイジ最終章の15.9億円に届かない公算が出てきました。そこで疑問が湧いてきます。「首」は何億円の興行収入を上げれば商業的に成功なのでしょうか?
興行収入9.9億円だから残り5.1億円…ではない
「首」は総製作費15億円で費用は全てKADOKAWAが出資しています。費用の内訳は、制作費が12億円で広告費とプリント費が3億円です。これだけ見ると興行収入が9.9億円なので、KADOKAWAは残り5.1億円で制作費回収に見えますが、実際はそんな単純な話ではありません。
映画館と折半し配給会社にも20%
まず映画は映画館で上映しないと意味がないので、映画館に使用料を支払います。使用料は映画の制作費でパーセンテージが変化しますが、大体は制作会社と映画館で折半です。つまりKADOKAWAは映画館に7億5000万円を支払い映画を掛けてもらいます。さらにKADOKAWAは配給会社にも折半した7億5000万円の20%、1億5000万円を支払います。「首」の興行収入は現時点で9.9億円なので、差し引きするとKADOKAWAの収益は9000万円にしかなりません。10億円近く興行収入があっても、実質の実入りは9000万円とは、かなり厳しいですね。
映画の二次利用権
もっともKADOKAWAは取られるばかりではありません。「首」の著作権はKADOKAWAが保有しているので、今後のブルーレイ化やテレビ、インターネット配信などの二次使用料が入ります。日本の市場規模では、この二次使用料は最大で5億円と見積もられています。仮に「首」が二次使用料で5億円の収入を得たと仮定すると、KADOKAWAは5.9億円を回収した事になり残りは9.1億円です。こちらに首の興行収入9.9億円を足すと19億円になり、KADOKAWAが投資を取り返すには「首」の興行収入が19億円に届く必要があります。
ヒットと呼ぶには20億円の興行収入が必要
「首」の制作費を回収するには、残り9.1億円の興行収入が必要ですが、これでもようやく制作費の回収なので儲かったとは言えません。ヒットしたと言うには2億円の収益をプラスして21億円の興行収入が必要です。15億円の費用を掛けて21億円の興行収入がないとヒットとは呼べないとは映画は厳しい世界ですね。
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