2024年1月1日、世界で最も有名なネズミ、ミッキーマウスとミニーマウスのオリジナルバージョンがパブリックドメインになりました。ただし、パブリックドメインになったのは全てのミッキーとミニーではなく、1928年に公開されたアニメ「蒸気船ウィリー」に登場したオリジナルのミッキーとミニーだけなので注意が必要です。それでも著作権料を支払わずにクリエイターが自由にミッキーマウスを使えるのは、新たなビジネスチャンスと呼べるでしょう。今回は、続々とパブリックドメインになる著名作品について解説します。
すでに多くのディズニーキャラがパブリックドメインに
実はパブリックドメインになったのは、初期のミッキーやミニーが最初ではありません。これまでにディズニーキャラクターでは、ピーターパン、バンビ、人魚姫、白雪姫、シンデレラがパブリックドメインになり、ディズニー以外でも映画「メトロポリス」に登場するアンドロイド、マリアがパブリックドメインですし、シャーロックホームズに関しては、全シリーズがパブリックドメインになりました。これによって、クリエイターは、あらゆる種類の新しいプロジェクトを自由に制作できるようになりました。
大成功したホラー映画「プーあくまのくまさん」
そんなパブリックドメインのキャラクターたちにクリエイターの熱い視線が注がれているのは、高い知名度をそのまま利用できるからです。例えば「クマのプーさん」は1926年に児童文学小説として発表され、2年前にパブリックドメインになりましたが、それを受けて制作されたイギリスのホラー映画「プーあくまのくまさん」は製作費10万ドル未満で、全米で520万ドル、日本円で約751億円以上の興行収入を稼ぐ大ヒットになっています。もしこれが、プーさんではなかったらこれだけヒットする事はなかったでしょう。パブリックドメインは、すでにビジネスチャンスとして利用されているのです。
延び続ける著作権
しかし、これらパブリックドメインを面白くない気持ちで見ている人達もいます。著作権管理人です。無理もありません。苦労して知名度を上げた作品が、何もしてない大勢のクリエイターに好き勝手にいじられるからです。そのため管理人達は政治家に働きかけ、著作権は何度か延長されました。当初、「蒸気船ウィリー」は1984年にパブリックドメインになる予定でした。当時の著作権は56年間だったからです。しかし著作権管理人の働きかけが功を奏し、1976年の著作権法により、著作権は75年に延長され「蒸気船ウィリー」の著作権は2004年まで延長。さらに1998年アメリカ議会は「ミッキーマウス保護法」を可決し、著作権は95年間に延長されたのです。しかし、さすがにこれ以上著作権は延びず、2024年1月1日で「蒸気船ウィリー」は陥落、パブリックドメインとなりました。それにより、早速アメリカでは、オリジナルミッキーマウスを使った映画が作成されていますが、こちらもプーさん同様、ホラー映画だそうです。
パブリックドメインの功罪
世界的に知られた著名作品を、著作権者の手から引き離し、大勢のクリエイターに解放するパブリックドメインですが、その結果として話題性だけを求めて、オリジナルのキャラクターを著しく歪曲した露悪的な作品も多く誕生する事でしょう。この事で本来のキャラクターに愛着を持っていた人々に嫌悪感を抱かせ、悲しませる事になるかも知れません。表現の自由と著名なキャラクターの同一性の保存、どちらも考えないといけませんね。
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