野田サトル原作の冒険アクション活劇「ゴールデンカムイ」が2024年1月19日に封切られ、公開17日間で観客動員数111万人、興行収入16.3億円を突破しました。アニメの実写映画は当たりはずれが多い中で、ここまでの大ヒットを出したゴールデンカムイ、その理由はなんなのでしょうか?
漫画と同じ動き
漫画の実写版で一番ガッカリするのは、原作と実写の配役のイメージに差がある事でしょう。もちろん二次元の漫画キャラクターと三次元の人間では全く同じにはなりませんが、例えば、ちょっとした動きのクセなどが異なると違和感ばかりが目についてしまい、映画を楽しめなくなります。しかし、その点ゴールデンカムイはよく造りこまれていて、アシリパの変顔や白石の軽妙な動き、牛山辰馬の柔道家ならではの掴み技、鶴見中尉の腕を振り上げての特徴的な走り方など、ちょっとした部分まで漫画に激似するよう工夫されています。
凄惨な日露戦争の描写
また、映画ならではの音楽と動きを駆使した表現も秀逸でした。原作では数ページで終わった日露戦争時の不死身の杉本の描写が充分に尺を取って克明に描かれ、首に銃弾を受けても死なない杉本の不死身ぶりや親友、虎次との別れが描かれていました。冒頭の日露戦争の部分が力強く描かれた事で、杉元が自分を庇って死んだ親友、虎次の「妻の眼病を治してあげたい」という願いをかなえるため、アイヌの金塊を求めるという戦う動機が分かりやすく表現されていました。また、ロシア軍の機関銃に向かい銃剣突撃を繰り返し、夥しい死傷者を出す日本軍の描写は、軍に絶望して北海道にアイヌの金塊で軍事政権を樹立しようとする鶴見中尉の狂気の野望にも説得力を与えています。
目をそむけるグロ描写も衝撃的
それに漫画でも頻繁に出てくるグロ描写も映画だと強烈なインパクトでした。本当に生きているかのような狂暴な羆の動きや、鶴見中尉に団子の竹串で頬をつらぬかれた杉元、羆の一撃で顔の皮を剥がされ、顔面の皮をぶらぶらさせながら羆に拳銃を乱射している玉井伍長は、ちょっと顔を背けたくなるほどにグロかったです。グロ描写以外でも杉元と雪原で格闘する尾形百之助や、疾走する馬ゾリの上での杉元と月島軍曹、二階堂浩平とのタイマンなど漫画では味わえない格闘が堪能できました。
巨額の製作費
劇場版ゴールデンカムイは、25億円以上の興行収入を見込んでいる事から、総製作費は12億円以上とみられています。日本の映画産業が斜陽と呼ばれて久しい中、12億もの制作費を出すのはリスキーに思えますが、漫画を原作にした映画では2023年だけを見てもSLUMDUNKが158億円、名探偵コナンが138億円、君たちはどう生きるか?が88億円、ゴールデンカムイと同じ実写映画キングダムが56億円と50億円を突破している作品が何本も出ていて、むしろ漫画原作の映画が日本映画をリードしている状態なのです。お金を掛ければ良い映画が撮れるわけではありませんが、ゴールデンカムイのような現代から百年以上前の時代を描く冒険活劇の場合は、どうしても一定のディテールを確保するために高い製作費は必要でしょう。この調子ならゴールデンカムイはキングダム2と並ぶ50億円以上の興行収入を叩きだすかも知れません。
まとめ
映画の長さが2時間をオーバーしながら少しも飽きさせなかった劇場版ゴールデンカムイには本当にお腹いっぱいで、ヒンナヒンナでしたがエンドロールの後には未登場キャラクターのカットを挟むなど、すでに続編を作る事を前提に動いているようです。もちろん、続編が出たら私も見に行きますが、まだゴールデンカムイを見ていない方には、是非、映画館の大スクリーンでの観賞をおススメします。
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