多くの漢民族が懐かしみ、憧れを抱き続ける漢王朝。400年という長きにわたって中国大陸に君臨した漢王朝は漢民族にとっての誇りとも言える存在です。ところが、私たち日本人は中国といえば漢代の次に訪れた時代を描く『三国志』を思い浮かべがち。
そうでなくとも、四大奇書に数えられる『水滸伝』や『西遊記』に目が行きがちで、漢王朝なんて中国史に載っている時代の1つくらいにしか思っていないという人も少なくないでしょう。
いいですか?本当は三国時代なんかより、四大奇書なんかより、漢王朝の方がずっとずっと重要なのです!『三国志』を読んで中国史の全てをわかった気になったり『金瓶梅』とかいうエロ本を読んだりしている場合ではありません。今すぐ『史記』や『漢書』、『後漢書』を手に取るべきなのです!
最低でも、項羽と劉邦の争いあたりは理解しておくべきなのです!
しかし、いきなり『史記』や『漢書』を読むのは正直難しすぎます。たとえ訳本であってもよくわからない言葉の羅列に頁をめくるのが嫌になってしまいます。
そこで役立つのが映画というコンテンツ。映画であれば流れる映像を見続けるだけで難しい歴史もたちどころに理解できちゃいます。というわけで今回は漢王朝成立までの過程を描いているおすすめの映画を3本ご紹介させていただきます。
この記事の目次
呂雉が見た楚漢戦争「項羽と劉邦~その愛と興亡~」
まず1本目にご紹介するのは中国と香港が手を取り合ってつくり上げた超大作
「項羽と劉邦~その愛と興亡~」。
中国で様々な映画を手掛けてきた名監督・張芸謀(チャン・イーモウ)が総監修をつとめた歴史スペクタクルは一見の価値ありです。物語は項羽と劉邦がそれぞれ秦王朝を打倒せんと旗揚げしたところから始まるのですが、物語は劉邦の妻・呂雉の視点で進んでいきます。鉅鹿の戦いの直前、劉邦は秦軍に追い詰められ、志を同じくする項羽の元に逃げ込みます。そこで意気投合した項羽と劉邦は義兄弟の契りを結ぶことに。
一方呂雉も項羽に仕える美しい女性・虞美人と出会います。呂雉は自分には無い純真無垢な心を持つ虞美人と心を通わせ夫たちと同じように姉妹の契りを結びました。しかし、項羽が秦の本軍としのぎを削っている間に虞美人は秦軍に捕らえられて阿房宮に軟禁されてしまいます。そして更に劉邦が先に秦の都・咸陽を落としてしまったことから両者の関係は著しく悪化してしまうのです。
一度は劉邦を殺そうと考えた項羽ですが、鴻門の会によって劉邦を殺害することを諦めて咸陽入りを果たします。虞美人が既に殺されてしまったと勘違いした項羽はやけくそになって阿房宮に火を付けました。ところが、ひょんなことからその地下の牢獄に虞美人が繋がれていると知った項羽はなりふり構わず業火の中に飛び込んで虞美人を救出。そんな2人の姿を見ていた呂雉の胸中には抱いてはいけない感情が燃え上がり始めたのでした…。
男たちの熱い戦いが見どころ「項羽と劉邦/White Vengeance」
「いやいや、女の危険の恋とかどうでもいいから男たちの熱い戦いが見られる映画が見たいんだ!」という人におすすめしたいのが「項羽と劉邦/White Vengeance」です。
「三国志」や「ドラゴン・ブレイド」といった歴史映画を手掛けているダニエル・リー監督の映画ということでとても見ごたえのある内容となっています。ド迫力の戦シーンも素晴らしいのですがこちらまで緊張を覚えてしまう鴻門の会のシーンや思わず項羽に同情して涙ぐんでしまう四面楚歌のシーンは何度も見返したくなってしまうでしょう。
病床の劉邦が思ったことは…「項羽と劉邦 鴻門の会」
陸川(ルー・チューアン)監督が手がけた「項羽と劉邦 鴻門の会」はありがちな項羽と劉邦の英雄譚かと思いきや、年老いて猜疑心でいっぱいになってしまった劉邦の心の闇を描き切った問題作です。病床で鴻門の会の悪夢にうなされ続ける劉邦。そんな劉邦の元に漢王朝建国の最大の貢献者であった韓信の首が届けられます。韓信の首を見た劉邦が思ったこととは…?人の影の部分に焦点を当てた新しい「項羽と劉邦」を是非ご覧あれ。
三国志ライターchopsticksの独り言
今回ご紹介した映画は全て漢王朝成立の歴史を描くものですが、三者三様それぞれ全く異なるストーリーとなっています。1本だけ選んで観るのも良いですが、3本全てを観ることができれば漢王朝成立を新しい視点を持って見つめることができるようになるかもしれませんね。
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