徳川幕府の14代将軍までの墓について、初代将軍徳川家康(とくがわいえやす)は静岡県の久能山を経て日光東照宮に埋葬されました。2代目秀忠から14代目の家茂までの将軍については徳川家が保護していた縁があって、東京都にある増上寺や寛永寺に埋葬されています。
しかし、15代最後の将軍である徳川慶喜(とくがわよしのぶ)についてはこれまでの将軍とは異なり、増上寺や寛永寺に埋葬されていません。寛永寺の近くにある谷中霊園に埋葬されています。今回は徳川慶喜が埋葬されている谷中霊園について取り上げます。この記事の最初に、谷中霊園の行き方・アクセス方法・営業時間を紹介します。谷中霊園の紹介をしてから、なぜ寛永寺に慶喜の墓がないのかその理由について取り上げます。その次に、徳川慶喜の葬儀から明治新政府の慶喜に対する評価ついて取り上げます。この記事の最後に大政奉還後の徳川慶喜の生活について取り上げます。
徳川慶喜の墓の所在地・営業時間・行き方
徳川慶喜の墓は谷中霊園にあります。谷中霊園は都が運営する墓地で、東京都台東区谷中にあります。谷中霊園は寛永寺や天王寺の近くにあって墓地が集まった地域にあります。
徳川慶喜だけでなく、鳩山一郎や渋沢栄一など著名人の墓もあります。幸田露伴の小説の舞台になった五重塔でも有名です。谷中霊園のホームページによると、営業時間は8:30~17:15で、12月29日から1月3日までの年末年始が管理事務所の休日です。アクセス方法はJR・京成本線の日暮里駅から徒歩6分です。
徳川慶喜の墓はなぜ寛永寺にないのか?
寛永寺に墓がない理由として徳川慶喜が大政奉還をしたことで14代までと別家になることで徳川宗家の存続を図ったと考えられます。その理由について考察する前に15代将軍になるまでの経緯について振り返ってみましょう。
第13代将軍徳川家定が病弱で世継ぎがなかったことから、14代将軍の座をめぐる争いが起こります。14代将軍の後継者として、紀州藩の徳川慶福(のちの家茂)と水戸藩の一橋(徳川)慶喜が争います。結果、大老井伊直弼が徳川宗家の血筋を重視して14代将軍を徳川慶福にします。
その後、名前を家茂と変えて、第14代将軍になりました。14代将軍家茂は13歳で将軍になりますが、21歳のとき長州征伐の途中、大坂城で病死します。家茂が江戸城を出発するときに徳川宗家の後継者として4歳の亀之助(のちの徳川家達)を指名していましたが、4歳の将軍が幕末の難局を乗り切るのは厳しい状況だったことから15代将軍として徳川慶喜が継ぎました。
次に、徳川慶喜が大政奉還をして江戸幕府を終わらせてから徳川宗家を存続させるまでの過程について考えてみましょう。慶喜は大政奉還後、戊辰戦争に参加せず新政府に恭順する姿勢を示すために謹慎生活を送ります。謹慎生活で恭順の意思を示したことが認められ、徳川宗家は続くことになりました。徳川家達が宗家を継ぎます。その後、家達は静岡藩主となり、廃藩置県後は貴族院議長を勤めました。慶喜が大政奉還後に14代までの徳川宗家と別家になったことから、寛永寺に埋葬されていないと考えられます。
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徳川慶喜の葬儀は?
徳川慶喜は大正2年(1913年)に急性肺炎で死亡しました。葬儀は神道式で行われました。葬儀には天皇・皇后・明治政府の関係者・海外の大使や公使など7000人程度が参列したと言われています。当時の東京都民は哀悼の意を表すために音曲などを中止したという記録も残っています。
徳川慶喜の評価
「徳川慶喜の葬儀は?」で取り上げたように明治政府の関係者など多くの人が参列していることから評価が高かったと思われます。戊辰戦争は明治新政府対旧幕府軍という対決という図式から、明治新政府にとって徳川慶喜は敵だという印象を受ける人がいるかもしれません。
徳川慶喜は戊辰戦争の最初の戦いである鳥羽伏見の戦いの直前に江戸城に逃げていて、新政府軍に恭順の意思を示したことから、天皇中心の新政府へ移行できたと言われています。慶喜は明治新政府の基礎を築いた人物としても高く評価されています。
大政奉還後の徳川慶喜
最後に、大政奉還後の徳川慶喜について紹介します。慶喜は戊辰戦争で戦わず、寛永寺で恭順の意思を示しました。戊辰戦争後に寛永寺から静岡に移って謹慎生活を送ってから謹慎生活が解かれました。静岡での隠居生活について多趣味だったという記録が残っています。
当時珍しかったカメラで鉄道や花の写真を撮っていたようで、写真展に作品を出していたようです。大政奉還前の徳川慶喜だけでなく、大政奉還後の慶喜の趣味にも注目すると面白いかもしれません。
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