「基本だよ。ワトソン君」の名言を残した名探偵シャーロック・ホームズ。
今回はシャーロック・ホームズをご紹介するのではなく、
彼に負けないほどの推察力を持った魏の国に実在した正直者の名探偵・
国淵(こくえん)をご紹介したいと思います。
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この記事の目次
岩を机にして勉学に励む
国淵は若い頃学問が好きで鄭玄(ていげん)を先生と仰いで勉学に励んでいきますが、
中華が戦乱によって荒廃し始めると比較的平和であった遼東へ逃亡。
彼はこの地の岩を机として勉学に励んでいったそうです。
この事を知った遼東の民衆達は彼の勉学に対する姿勢を褒め、
名を知られていくことになります。
仕事の評価制度を制定する
彼は中華の戦乱がある程度落ち着くと故郷へ帰郷します。
曹操は国淵が優秀な人材であることを知り彼を招いて配下に加えます。
国淵は曹操に仕えると広大な地域に屯田制を行う考えを持っており、
国淵に屯田を統括する事務を任せることにします。
彼は曹操に命じられて屯田の事務を任せられると
屯田制を行う土地を自らの足で歩いて調査を行い、
屯田制を行う際その土地が農業に適した土地なのかどうかを調べていきます。
こうして土地の善し悪しをしっかりと見極めると民衆を屯田を行う土地に住ませて、
民衆の数に応じた役人を配置。
そして屯田を行った際の出来高の成績をしっかりと制定させます。
この結果、国淵が屯田制を行った土地は5年で食料庫に食料がしまえないほど貯蓄され、
民衆達は良い成績を残すために一所懸命楽しく仕事を行ったそうです。
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「二京の賦」を引用した悪口が書かれる
「二京の賦(にきょうのふ)」とは後漢中期の科学者・張衡(ちょうこう)が作った作品です。
この二京の賦を引用して曹操の統治に対して悪口を投函してくる者がおりました。
曹操はこの作者に対して激怒し、何とかしてこの作者を知りたいと考えておりました。
国淵は事件のにおいがすると部下へ声を掛けると
二京の賦を引用して政治の悪口が書かれた書を保存しておくことにします。
名探偵国淵の犯人探しその1;学問を若者に受けさせる
国淵は役人に「最近学問が衰退しているので、
理解力があり見所のある若者を集め、
先生につかせて学問を行ってやりたいと考えているのだが、誰か適任者はいないかね」と相談。
すると役人は見所のある若者を三人連れてきます。
国淵はこの三人へ二京の賦を見せて「君たちが今まで勉強に励んできたそうだが、
まだこれは知るまい。
この二京の賦は非常に優秀な作品であるが、この賦を読める先生があまりいないのだ。
そこで君たちにこの賦を読むことのできる先生を探してこの先生に教えを乞うて来なさい」
と指示を出します。
若者は国淵に元気よく「分かりました。」と言って走り去っていきます。
名探偵国淵の犯人探しその2:二京の賦を書いてもらう
若者達は国淵へ「二京の賦を読める先生を探し出しました。」と報告を受けます。
国淵は役人へ命じて「君。今から若者達が探し出した先生の所へ行って、
二京の賦を書いてきてもらってくれ」とお願いします。
役人は若者達が通っている先生の元へ到着すると
「先生。ぜひ二京の賦を書いていただけないでしょうか」と礼を尽くしてお願いします。
先生は仕方なく二京の賦を書いて役人へ渡します。
名探偵国淵の犯人探しその3:筆跡を調べる
国淵は役人が帰ってくると二京の賦を引用して書いていた現状の政治に対する悪口が
かいてある書を出します。
そして先生が書いた二京の賦との筆跡鑑定を開始。
その結果二京の賦を引用して書いた政治の悪口と
若者たちへ勉学を教えている先生が書いた二京の賦が同筆であることが判明。
国淵はすぐに役人に命じて彼を逮捕し尋問をさせると犯人だということが分かり、
事件は解決されることになります。
そして彼は部下の役人へ「基本だよ。ワトソン君」と言ってパイプをくゆらせたそうです。
三国志ライター黒田レンの独り言
名探偵・国淵ですがこの事件を解決した後大臣の位に昇進しておりますが、
現職のまま亡くなってしまいます。
彼は大臣となっていながら貧相な服を来て、
もらった褒美などは全て友人や親族に分け与えていたそうです。
彼にしてみればこれも「当然だよ。ワトソン君」と言ってパイプをくゆらせていそうですが…。
参考文献 ちくま文芸文庫 正史三国志魏書2 今鷹真・井波律子著など
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