【三国志究極の選択】徹底抗戦とあっさり降伏どっちが偉い

2018年2月17日


 

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洛陽城

 

古代中国の都市は、「進撃の巨人」の街みたいな城郭都市でした。街が敵に取り囲まれた時、敵が何者であろうとさっさと降伏してしまう城主と、徹底抗戦する城主と、どちらが偉いのでしょうか。

 

鎌倉を出禁される源義経

 

日本式に「忠義」とか「滅びの美学」とかいうことを考えますと、徹底抗戦のほうが賞賛を浴びそうですが、中国式に考えると答えは逆になるかもしれません。

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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敵に降伏することのメリット

 

中国の「城」は日本のお城のような武士の詰め所兼要塞ではなく、街全体を城壁で取り囲んだものです。城内にお店や住居があり、ふつうに市民生活が営まれています。外敵が襲ってくると城門を閉ざして抵抗するわけですが、その際、街の住民はまるごと缶詰です。早々に敵に降伏してしまえば市民生活は保たれたまま城主が入れ替わるだけですが、徹底抗戦となると住民は無事では済みません。

 

唐(とう)代の安史(あんし)の乱の際、徹底抗戦を選んだ睢陽(すいよう)城は、六万ともいわれる人口が400人にまで減ってしまっています。早々に降伏することのメリットは、人命やインフラが損なわれずに済むことです。

 

敵に降伏することのデメリット

 

城をあげて敵に降伏した場合、悪くすると住民が殺されたり奴隷にされたりすることもありますが、そうなることは稀です。攻め手の軍人の人数よりも街の住人の数のほうが多いですし、降伏してきたものはまるまる頂いておいたほうが、マンパワーや資材を自勢力に取り込めておトクですから、攻め手は降伏してきた城の住民には手をつけないのが普通です。怖いのは攻め手の軍の統制がとれていない場合で、勝手に略奪を始める兵士が続出することが考えられます。

 

他のデメリットとしては、城主や幹部が捕まったり処刑されたりするかもしれないということと、自分たちの勢力にとって城を失うことが戦略的に傷手となるであろうということです。

 

まだ漢王朝で消耗してるの?

 

 

メリットとデメリット、どちらをとるか

 

降伏のデメリットとして挙げた略奪のおそれについては、徹底抗戦して住民が全滅するよりはましですから、これについては降伏したほうがいいということになります。残りのデメリット、城主や幹部の身柄と自分たちの勢力に与える戦略的な影響については、街の人命とインフラが守られるというメリットとはかりにかけてどちらを取るのか悩ましいところです。

 

城主や幹部の身柄については、よほど無能でない限りは敵と上手に交渉してのらりくらりと生き延びるだけの知恵を有しているはずです。通常、降伏前に街の人命を守るためにうんぬんかんぬんとご大層に敵方に能書きを述べておけば、敵は「ああハイハイ、身柄が保証されるなら降伏しますってことね」と理解して、余計な手間がはぶけて双方のメンツも立つならそれが一番いいでしょうってことで城側の要望を受け入れます。

 

降伏のデメリットのうち、最も悩ましいのが自分たちの勢力に与える戦略的な影響です。先述した睢陽(すいよう)城は、戦略的な影響を考慮して徹底抗戦を選びました。

 

戦略的な影響はゆるがせにできない?

 

敵に降伏するデメリットのうち、最大の問題である、自分たちの勢力に与える戦略的な影響。日本人の感覚からすると、おそらくこれは決してゆるがせにできない問題であろうと思います。全体の勝利につながるなら、そのために自分たちが犠牲になることもいとわない、という発想。至極まっとうな感じがします。ひとたまりもなく降伏してしまう城主がいると、なんだだらしない、裏切り者、と責めたくなりますよね。

 

 

一方、血みどろの籠城戦をした挙げ句に処刑される城主がいても、最後までよく頑張りました、と言ってあげたい気持ちになるのではないでしょうか。このあたりは、日本人と中国人とで感覚が違うはずです。

 

全体の勝利なんてあてにならないという考え方

 

日本人はどちらかというと集団や組織を信じているのではないでしょうか。世のため人のためになることはとても大切だと考えていて、そういう方向の努力は誰でも認めてくれますよね。

 

一方、中国人は集団や組織というものに絶対的な価値を置いてはいません。集団や組織はいつどう変わるか分らないですし、自分の努力をみとめてそれに見合うリターンが常にあるとも限りません。

 

 

集団なり組織なりには頼らずに、自分を磨くことや身内を大切にすることで足下の生活をしっかりと固め、世界がどんなに変わろうとも頭上にはためく旗の色が変わるだけで自分たちの生活は何も損なわれないようにするのが賢明な生き方です。

 

こういう発想からすると、自分たちの勢力全体に与える戦略的な影響を考慮して目の前の市民生活を犠牲にするのはちょっと異常な判断ということになります。

 

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三国志ライター よかミカンの独り言

三国志ライター よかミカンさん

 

中国ではたびたび易姓革命(えきせいかくめい)が起こっており、体制なんか変わるものだという感覚なんですね。こういう感覚だと、体制を維持するための徳目である大義よりも市民生活のほうが大切です。

 

大義についてはのらりくらりと上手く処理しながら市民生活を守ってくれるのがいいトップなのです。

 

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関帝廟

 

 

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よかミカン

三国志好きが高じて会社を辞めて中国に留学したことのある夢見がちな成人です。 個人のサイトで三国志のおバカ小説を書いております。 三国志小説『ショッケンひにほゆ』 【劉備も関羽も張飛も出てこない! 三国志 蜀の北伐最前線おバカ日記】 何か一言: 皆様にたくさん三国志を読んで頂きたいという思いから わざとうさんくさい記事ばかりを書いています。 妄想は妄想、偏見は偏見、とはっきり分かるように書くことが私の良心です。 読んで下さった方が こんなわけないだろうと思ってつい三国志を読み返してしまうような記事を書きたいです!

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