蜀の丞相・諸葛亮が書いたと言われてきた『将苑』という兵法書があります。
現代では、後人が諸葛亮に仮託して書いた偽書であるとされています。
偽書であるとすれば、きっと諸葛亮のことをよく知っている諸葛亮マニアが書いたのでしょう。
劉備が息子の劉禅にオススメした兵法書『六韜』に似た雰囲気で、なかなか面白い兵法書です。
本日は、この『将苑』を読みながら、諸葛亮も認める立派な将軍になる方法を考えてみましょう。
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さっそく読んでみる
『将苑』では、「それ将たるの道に八弊あり」という書き出しで、立派な将軍になることを妨げる八つの弊害が書かれています。
一に曰く、貪にして厭くなし。
二に曰く、賢を妬み能を嫉む。
三に曰く、讒を信じ佞を好む。
四に曰く、彼を料りてみずから料らず。
五に曰く、猶予してみずから決せず。
六に曰く、酒色に荒淫す。
七に曰く、姦詐にして心怯なり。
八に曰く、狡言にして礼をもってせず。
【意味】
一、果てしなく貪欲
二、できる人を妬む
三、悪口を信じへつらいを好んで聞く
四、他人のことは分かっても自分のことが分かっていない
五、優柔不断
六、酒色におぼれる
七、悪賢くて卑怯者
八、口ばかりうまい無礼者
こんな私でも立派な将軍になれますか
いかがでしょうか。
私は、これ私のことなんじゃないかっていうくらい、ほとんどの項目に該当しております。
「他人のことは分かっても自分のことが分かっていない」はあてはまりません。他人のことも分かっていないので。
「酒色におぼれる」も違います。
あとは全部あてはまりますよ。
どうすればいいんですか、丞相!
丞相は答えてくれない……
丞相は答えてくれないので、自分で考えるしかありません。
弱点があることは恥ではない。弱点に気付くことのできない愚かさと、気付いたとしても対策をとらない怯懦こそが恥なのだ!
『将苑』に書かれている八項目は、自分にはこういう弱点があると気付くきっかけになればいいのではないでしょうか。
私は貪欲で嫉妬深く悪口とへつらいが大好物で、自分のことも他人のことも分かっていないとんまであり、優柔不断なくせに悪賢くて卑怯者で、
口ばかりうまい無礼者であります、ハイ。
あ~、胸がすくような小者っぷりですなぁ。キャラ的にオイシイのでこのままにしておくか。立派な将軍にはなれないけれど。
八項目を実地に役立てる方法
冗談はさておき、弱点を克服してどこへ出ても恥ずかしくない人になるにはどうすればいいでしょうか。
『将苑』で説かれている八項目を胸に刻んでおき、折に触れて “自分の今のこの行動は八項目のこれに該当していないか?”と
己に問いかけるようにすればよいのではないでしょうか。
例えば、有能な人に対して嫉妬心が沸いたとき、いかんいかん、こんな気持ちを抱くようでは立派な将軍になれないぞ、と考えて、
できる人のことは素直に賞賛すればいいサ、自分は自分のできることに集中しよう、と思い直してみたりとか。
優柔不断な態度をとってしまいそうな時に、これは将としてはふさわしくない態度だ、思い切って一つの選択をしてしまい、
あとはそれに向けて力一杯やってみよう、と考えてみたりとか。
いにしえの将軍たちも『将苑』のような兵法書を読みながら己を励ましてがんばってお仕事していたのかな~と考えると、
自分もがんばってみる勇気が沸いてくるはずです!
三国志ライター よかミカンの独り言
『将苑』に書いてある八項目に該当するような人物を想像してみると、実にくだらない人物像が浮かび上がりますが、この八項目は
多かれ少なかれ誰にでもあるような弱点です。
立派な将軍になれるかなれないかの違いは、弱点を認めて改善していく勇気があるか弱点におぼれて諦めてしまうかの違いではないでしょうか。
自分の弱点に目が行ってくじけてしまいそうな時は、ぜひ『将苑』を読んでいにしえの名将たちの勇気に思いを馳せてみて下さい。
参照テキスト:守屋洋(もりやひろし)『諸葛孔明の兵法』徳間書店 1977年4月10日
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