鶴見中尉のモデルは史実の第七師団にいた!

2020年7月11日


 

はじめての三国志コメント機能バナー115-11_bnr1枠なし

内容に納得がいかないkawauso様

 

アニメ化もされたアイヌの金塊(きんかい)を巡る争奪戦を描いた冒険アクション漫画ゴールデンカムイ。魅力的なキャラクターが活躍するこの漫画で異彩を放っているのが、第七師団歩兵第27聯隊(れんたい)に所属している鶴見中尉(つるみちゅうい)です。

 

日露戦争(にちろせんそう)奉天大会戦(ほうてんだいかいせん)前頭葉(ぜんとうよう)を負傷して以来、興奮すると額当(ひたいあ)てから脳汁がビュバー!するグロくて危険で高いカリスマ性を持つ鶴見中尉にはモデルがいるのでしょうか?

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


【誤植・誤字脱字の報告】 バナー 誤字脱字 報告 330 x 100



【レポート・論文で引用する場合の留意事項】 はじめての三国志レポート引用について



金カム鶴見中尉とはどんな人?

鶴見中尉のモデルとなった須見新一郎

 

ゴールデンカムイの主要人物、鶴見中尉は鶴見篤四郎(つるみとくしろう)と言い、新潟県出身、大日本帝国陸軍所属の将校です。第七師団と言いましたが、鶴見中尉が第七師団を支配しているのではなく、第七師団歩兵27聯隊に所属する一中尉に過ぎません。

 

本来なら中尉なんて軍隊では大した影響力はないのですが、鶴見中尉は歩兵27聯隊隊長淀川輝前(よどがわさきふさ)中佐の弱みを握る事で事実上の27歩兵連隊の隊長の立場であり、100人足らずの部下しか持たないにも関わらず第七師団に大きな影響力があります。

 

鶴見中尉は情報将校で、情報分析と情報収集を得意としており、アイヌの金塊、ゴールデンカムイを得て、アメリカから武器を購入し北海道を封鎖して独立国とし国家指導者になろうという野望を持っているようです。

 

その為に、金塊のありかを記した刺青人皮(いれずみにんぴ)が必要であり、これを巡って、杉元やアシリパ、土方歳三の一派と刺青人皮の争奪戦を繰り広げています。

徴兵から逃れをようと国外に逃亡を試みる日本人兵

 

鶴見中尉の野望の底には、旅順攻略戦における無謀な突撃作戦で味方を大勢殺した大日本帝国指導部への恨みがあり、我々の戦争はまだ終わっていないを口癖に刺青人皮を得るには手段を択ばない狂気の一面を有し、同時に育ちの良さから来る品や狂気に共鳴した人間を惹き付けるカリスマ性も持っています。

 



第七師団に鶴見という人物は存在する

同年小録(書物・書類)

 

では、鶴見中尉にモデルがいるかを調べてみましょう。試しに日露戦争に参加した第七師団(旭川)についてWikipediaを調べてみると、これがすんなりと鶴見という人物が出てきたのです。

 

第7師団(旭川) - 師団長:大迫尚敏(おおさこなおとし)中将

歩兵第13旅団 - 旅団長:吉田清一(よしだせいいち)少将

歩兵第25連隊 - 連隊長:渡辺水哉(わたなべみずや)大佐

歩兵第26連隊 - 連隊長:吉田新作(よしだしんさく)中佐

歩兵第14旅団 - 旅団長:斎藤太郎(さいとうたろう)少将

歩兵第27連隊 - 連隊長:奥田正忠(おくだまさただ)中佐、竹迫弥彦(たけさこやひこ)中佐(後任)

歩兵第28連隊 - 連隊長:村上正路(むらかみまさみち)大佐

騎兵第7連隊 - 連隊長:白石千代太郎(しらいしちよたろう)中佐

野戦砲兵第7連隊 - 連隊長:鶴見数馬(つるみかずま)中佐

工兵第7大隊 - 大隊長:佐藤正武(さとうまさたけ)少佐

後備歩兵第1旅団 - 旅団長:友安治延(ともやすはるのぶ)少将、隠岐重節(おきじゅうせつ)少将(後任)

後備歩兵第1連隊 - 連隊長:余語征信(よごまさのぶ)中佐

後備歩兵第15連隊 - 連隊長:香月三郎(こうづきさぶろう)中佐

後備歩兵第16連隊 - 連隊長:新名幸太(しんなこうた)中佐

後備歩兵第4旅団 - 旅団長:武内正策(たけのうちせいさく)少将

後備歩兵第8連隊 - 連隊長:三上晋太郎(みかみしんたろう)大佐、丹羽剛(にわつよし)中佐(後任)

後備歩兵第9連隊 - 連隊長:高城義孝(たかぎよしたか)中佐

後備歩兵第38連隊 - 連隊長:滝本美輝(たきもとみき)大佐

野戦砲兵第2旅団 - 旅団長:大迫尚道(おおさこなおみち)少将、永田亀(ながたかめ)少将(後任)

野戦砲兵第16連隊 - 連隊長:成田正峯(なりたまさみね)中佐

野戦砲兵第17連隊 - 連隊長:横田宗太郎(よこたそうたろう)中佐

野戦砲兵第18連隊 - 連隊長:本荘全之(ほんしょうまさゆき)中佐

 

引用Wikipedia

君主論18 kawausoさん

 

残念ながら、第27歩兵連隊ではありませんが、野戦砲兵第7連隊の連隊長に鶴見数馬中佐という人物が出てきています。こちらの鶴見中佐も旅順攻囲戦や奉天会戦で健闘したと出ている事から、鶴見中尉のモデルは、こちらの鶴見中佐と見て間違いないでしょう。

 

しかし、見ての通り諜報部員ではない事や、その後の経歴でも諜報に従事した様子もない事から鶴見中佐は苗字だけを拝借したと考えた方がいいようです。

 

いだてん

 

鶴見中尉の行動のモデルは?

kawausoと曹操

 

では、鶴見中尉の行動のモデルは誰でしょうか?

 

ゴールデンカムイでの鶴見中尉はゴールデンカムイにおける鶴見中尉は、過去にロシア帝国ウラジオストクで長谷川幸一(はせがわこういち)の偽名を使い、写真館を営みながらスパイ活動をしていた時期があります。さらには、偽装工作の一環か、ロシア人のフィーナと結婚しオリガという娘までいました。

 

そこで、当時10代のアシリパの父、ウィルクとキロランケに日本語を教えていたという因縁があり、ただの陸軍軍人ではない経歴が窺えます。

 

その点を考えると、1890年にロシア駐在武官として、ロシア貴族の娘アリアヅナと交際していた広瀬武夫(ひろせたけお)海軍少佐も考えられるのではないかと思います。

沈没するルシタニア号

 

この広瀬武夫は1902年に帰国して、1904年の日露戦争に従軍し、旅順港閉塞作戦に参加するものの、戻ってこない部下を探す為に自爆させた船に何度も戻りついには諦めてボートで離脱しますが、その途中に頭部にロシア軍の砲弾の直撃を受けて頭を吹き飛ばされ戦死しました。壮烈な最期から日露戦争時の軍神第一号として神格化され、戦前は軍神広瀬として国民的な人気が高い人物です。

 

第七師団のアイヌ兵北風磯吉

 

鶴見中尉を狂わせた原因の一つに旅順攻囲戦における第三回攻撃があります。この総攻撃での第3軍の死者は5052人、その中で第七師団の死者は1982人、負傷者4224人合計6206人と割合が多くなっています。そして師団ごとの内訳では、25連隊570人、26連隊、542人、27連隊425人、28連隊390人となり歩兵25連隊の死者が最も多いです。

 

また、調べてみると第七師団の25連隊には、同じく第三回総攻撃で白襷決死隊(しろだすきけっしたい)1500名に志願した北風磯吉(きたかぜいそきち)というアイヌ人の兵士がいた事が分かりました。

 

彼は敵弾をかいくぐり、味方を鼓舞して敵を攻撃し撤退の折には、負傷した中隊長を背負って帰還したそうで、次の奉天大会戦でも、銃弾が飛び交う戦場を伝令として走り、傑出した活躍でその場で上等兵に昇進し戦後には金鵄勲章(きんしくんしょう)を受けています。

 

そう言えば、ゴールデンカムイの主人公、杉元佐一(すぎもとさいち)も、この白襷隊の1人でした。

 

キングダムライターkawausoの独り言

kawauso 三国志

 

鶴見中尉は、多くの被害を出しながら報われなかった第七師団の遺族や兵士の為に、アイヌの金塊を発見して北海道に独立国を樹立して、十分に報いてやれるようにする事を行動の大義にしているようです。

 

実際には、日露戦争以前からアイヌの金塊には関心を持っていたようで、この漫画の性質上、全てを鵜呑みには出来ませんが、行動の底に日露戦争と第七師団の悲劇がある事は間違いないかと思いました。

 

関連記事:ゴールデンカムイネタバレ予想 131話 死神がやってくる

関連記事:ゴールデンカムイネタバレ予想 130話 誘導灯

 

こんにちは西洋

 

 

  • この記事を書いた人
  • 最新記事
kawauso

kawauso

台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。本当は三国志より幕末が好きというのは公然のヒミツ。三国志は正史から入ったので、実は演義を書く方がずっと神経を使う天邪鬼。

-ゴールデンカムイ
-