2023年のNHK大河ドラマの主人公は徳川家康です。天下を統一した人物の常として家康には敗者の嫉妬が入り交じった老獪で狡猾なタヌキオヤジのイメージがありますが、それに加え家康はドケチであったから天下を取れたという話もあるのです。老獪で狡猾でドケチなら人に好かれる要素はゼロですが、それは本当なのでしょうか?
家康のドケチエピソード
家康のドケチエピソードは幾つか伝わっています。例えば天下統一後、トイレで大を済ました家康が尻を拭こうとすると落し紙が風で飛んでいきました。すると家康はお尻丸出しで紙を追いかけ、その無様な姿を家臣に見られてしまいます。しかし家康少しも慌てず「わしは落し紙一枚無駄にしないから天下を取れたのだ」と言い放ったとか…
家康のドケチぶりは家臣にも向けられます。当時フンドシは白でしたが、家康は白だと汚れが目立つから何度も変えないといけない。黄色のフンドシにしなさいと奨励したそうです。なんとも汚いケチぶりですね。
家康は活きた金を使う達人だった
こんな逸話を聞くと、家康が僅かな金も惜しむ守銭奴だったのかと思いますが、一方で家康は必要な時にはドーンとお金を出しました。例えば家康の所領があった三河の矢作川が氾濫し橋が流された時の事です。当時は橋が流されると、渡し舟を橋の代用にする事が多かったのですが、家康はすぐに大金をかけ橋を架け直しました。家康の普段のケチぶりから見ると正反対の行動ですが、家康は渡し舟は安上りでも、一度に大勢の人間が渡れないし、渡し賃も発生するので領内の物流が滞り、長期的に見ると税収が減ると考えたのです。
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江戸の経済繁栄を担保した三貨制
また、家康は江戸時代の経済発展に寄与する大きな散財をしています。それが、小判と銀と銅銭を通貨として流通させる三貨制でした。戦国時代まで日本の貨幣は銅銭のみで、それは重く、大きな商売をするのに不便でした。また銅銭は中国からの輸入に頼っていたので、輸入が滞ると銅銭が摩耗して劣化したビタ銭になって、使いづらくなり経済の停滞を招いたのです。
そこで家康は倹約して貯め込んでいた金銀銅を放出して新しい貨幣を造りました。小判や銀貨の登場は銅銭の使用量を減らし、大きな商売をやりやすくします。また幕府が貨幣を鋳造する事で劣化した貨幣は回収されるようになり、経済の円滑な流通を妨げていたビタ銭が消滅したのです。
お金を大事に使った家康
家康には鳥居忠吉という財政手腕に長けた老臣がいました。桶狭間の戦いの後、本拠地の岡崎城に帰った家康ですが、それまで今川家の人質でろくに財産もないのでこれからどうしようと途方に暮れていました。この時、忠吉は密かにため込んでいた財産を家康に見せて、これを使うように進言したそうです。家康の中には「忠吉が苦労して貯めたお金を一銭も無駄にはしまい」という決意が生まれ、それが表面上はケチに見える家康の性格となったのでしょう。
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