どうする家康が史実にはない同性愛を正面から描いた意味

2023年3月19日


駒(麒麟がくる)

 

 

NHK大河ドラマどうする家康第10話の「側室どうする?」では、家康が側室として城の下働きをしているお葉を迎えた場面が描かれました。無口で目立たないが真面目に仕事をし、突進する猪もさばけるお葉を瀬名や於大の方は気に入るのですが、お葉は同性愛者で自分の性に人知れず悩んでいたのです。

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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嫁に出される事を恐れて奉公へ

名古屋城

 

お葉は家康に本家を滅ぼされた鵜殿氏の支流ですが、男に触れられると吐き気がするとして、異性を受け付けない体質でした。そのため実家から嫁に出される事を恐れ城に奉公すれば嫁にいかなくて済むとして、岡崎城に奉公に入ります。そして目立たないように勤めていましたが、ある日、獲れた猪を刃物で撃ち殺し、豪快にさばいてみせた腕前を於大や瀬名に見込まれて、家康の側室にされてしまうのです。

 

 



お互いが相手を恐れていた初夜

暗殺(寝ているシーン)モブ

 

お葉は側室になった段階では、自分が同性愛者だとは気づいていませんでした。ただ、男が苦手だという認識があるだけだったのです。そんなお葉が、どうすれば男が悦ぶのか知っているわけはありません。そこで家康の正室である瀬名が家康は耳が性感帯で、その後、お腹を撫でればイチコロだとアドバイスします。

ヘタレすぎる徳川家康

 

 

その通りに実行しようとしたお葉ですが、異性に触れられるのが苦手なのでジリジリと家康に詰め寄り、家康を羽交い絞めにして押し倒し、よしよしよしとお腹を撫でるという猛獣を撫でるムツゴロウさんのような行動に出て家康は悲鳴を上げました。それはコメディタッチで、家康が被害者のように見えますが、実はお葉も被害者なのです。異性に対しどう接していいか分からないお葉にとってはそれが精一杯の愛情の示し方でした。

 

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同じ下働きの美代に惚れて同性愛者だと知る

徳川四天王のひとりで家康に一番近かった男・酒井忠次

 

 

それでもやがて、家康の子を授かるお葉ですが、同じ下働きの女性、美代を好きになってしまいます。そこでお葉は初めて、自分は同性愛者で男を受け付けない体質なのだと悟ったのです。本当の自分の性に気が付いたお葉は、もう家康の夜伽は出来ないと決意し、家康に好きな相手が出来たと告げて側室を辞退したいと申し出ます。

 

織田信長に翻弄される徳川家康を支える榊原康政

 

 

すっかりお葉が気に入っていた家康は逆上し「相手の男を連れてこい、手打ちにしてやる」と息巻きますが、お葉が美代を連れてくるとあまりの事に絶句してしまい、側室から解放して、元の下働きの下女に戻したのです。

 

 

それは史実ではないが…

テレビを視聴するkawauso編集長

 

今回の放送については史実を無視して、LGBTに阿っているという意見もありました。確かに、お葉のモデルは西郡局と称される実在の女性で同性愛者だったという記述はありません。ただ、大河ドラマは、そのままズバリの時代劇を放送するものではありません。多くの場合、時代劇を通して現代の問題に一石を投じようとしている事が多いのです。

マラソン日本代表として走る中村勘九郎 いだてん

 

 

たとえば2019年の大河ドラマ「いだてん」は、日本の近代スポーツの誕生とオリンピックを描いていますが、メダル取得への偏重や国家とスポーツの関係、ナショナリズムと五輪精神など、そのまま21世紀にも横たわる問題を描いていました。どうする家康は戦国時代を描いていますが、戦国時代を描きながら、現代の結婚の問題、子育ての問題、女性の権利問題などを問うていくのは、正しく、これまでの大河ドラマの路線に沿った手法ではあるのです。

 

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台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。本当は三国志より幕末が好きというのは公然のヒミツ。三国志は正史から入ったので、実は演義を書く方がずっと神経を使う天邪鬼。

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