こんにちは。日本古代史ライターのコーノヒロです。今回は、邪馬台国の女王・卑弥呼に抵抗し、卑弥呼を苦しめ、もしかしたら、死に追いやった原因を作ったかもしれない国について深く探っていきます。どうぞお楽しみください。
邪馬台国連合への抵抗勢力
前回までのお話では、邪馬台国の女王・卑弥呼は、出雲王国の領土を継承したとして、話を進めてきました。
(前回記事:卑弥呼降臨 倭国大乱を制す【前編】)
所謂、日本書紀と古事記の「天孫降臨」の話が、そこに該当するというものでした。
ということは、
卑弥呼女王の統治時代、邪馬台国中心とした倭国連合は、日本列島の大半を掌握していたと考えられそうなものですね。
前身の出雲王国は、日本列島の大半を、その勢力においていたはずですから。
前回までの話では、
「出雲王国の勢力は、九州以外の西日本と、さらに東日本の北陸、東海、信州 に達していた。」
これが、出雲王国の最大領土と考えられる説に基づいて話を進めてきました。
すると、その領土を継承した邪馬台国連合に抵抗したとされる狗奴国という存在は、かなりの勢力を誇っていたと考えられるでしょう。
以前の通説では、南九州に狗奴国の領土があったとのことを目にすることが多々ありました。
しかし、これまでの調査で明らかになっているのは、想像以上に古代の出雲王国や邪馬台国の領土は広かったという説です。
それもなかなか信憑性も高いと考えられるのです。
すると、広範囲の邪馬台国連合に抵抗し、女王・卑弥呼を苦しめた、狗奴国の勢力は強大だったと考えるべきでは?ということなのです。
軍事力もそうですが、領土も比較的広かったのでは?ということなのです。
歴史が証明しているように、小国が大国に勝利したというケースは幾度もありました 。
しかし、これまでのお話の流れで考えると、邪馬台国がそうだったように、狗奴国も広範囲の国と考えられそうです。
そうだとして、話を進めて参りましょう。
狗奴国はどこにあったの?
次は、狗奴国の位置についてです。
調べてみると、以下のようなことが分かってきました。
まずはこちらの情報から。
東海地域に濃尾平野という広い平野がありますが、ここは、古来、日本列島最大規模を誇る水田稲作を可能とする平野だったということなのです。
この地域に「朝日遺跡」や「廻間遺跡」など、複数の大規模な遺跡群が発見されているのですが、その成立年代が、2世紀後半から3世紀中頃だったということが判明しています。
にもかかわらず、濃尾平野の地域が、邪馬台国時代や大和王権成立の時期に、政治連合の集合体の中心的な位置を占めていたとは考えられないというのです。
そして、邪馬台国連合は、大和盆地の諸勢力と瀬戸内海地域、北九州地域の諸勢力を含めていたと考えられます。
これらのことを併せて考えてみますと、濃尾平野に、邪馬台国連合とは別の勢力が存在したと考えて良いのではないでしょうか?
そして、それが狗奴国だったのではないかということなのです。
また、『魏志倭人伝』の記述では 、邪馬台国の南方向にあったとされる狗奴国ですが、それは『魏志倭人伝』の編者の地理観に誤解があったのではないかと考えられるというのです。
編者は、日本列島は南方向に延びていると誤解していたというものです。
しかし、実際は東方向に延びていた訳です。
ただ、この点においては、過去に、作家の松本清張が、古代人の地理感覚を正確なものとして書いている記述があったとして、報告したことがありました。
しかし、入り組んだ海岸線や蛇行した川や陸地を進むと、方向感覚は多少なりとも狂うだろうと考えられますので、必ずしも正確だったとは言えないでしょう。
つまり、邪馬台国の東側に位置する、東海地域の濃尾平野にあった勢力が、狗奴国だったと言えるということです。
出雲王国は分裂していた?
すると、こう考えられるでしょうか?
邪馬台国を中心とした諸国連合は、北九州地域から瀬戸内海、山陰、近畿までは、確実に手中に入れていました。
しかし、東海地域は、狗奴国の領土でした。
ということは、邪馬台国諸国連合の前身であったとされる出雲王国は、東海地域も含めていたはずですから、それらの地域は、邪馬台国連合に服さず、出雲王国崩壊後は、その領土は分裂していたということになるでしょうか。
さらに、北陸や信州などの地域も、出雲王国の領土だったとする説がありますから、こちらも、邪馬台国の諸国連合には服さなかったということでしょう。
そう考えると、邪馬台国のあった時代は、倭国として、統一されていた訳ではなく、さまざまな諸国の集合体で、分裂していたのでしょう。
倭国大乱の余波は残っていたと言えるでしょう。
北陸や信州の地域にも何かしらの抵抗勢力があったと考えても良さそうですね。
狗奴国とはどんな国?のまとめ
次回は、その狗奴国の指導者だったとされる、卑弥弓呼の正体について探っていきます。
おそらく、あの英雄が再登場します。
お楽しみに!
【参考資料】
◆東国尾張とヤマト王権
― 考古学から見た狗奴と尾張連氏 ―
(大阪府立近つ飛鳥博物館)
◆『古代史疑』 松本清張 著(中公文庫)
◆『出雲と大和 ― 古代国家の原像をたずねて ―』村井康彦著(岩波新書)
◆『伊勢と出雲 韓神と鉄』 岡谷公二著(平凡社)
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