林冲は『水滸伝』に登場する108人の豪傑の1人です。あだ名は豹子頭と言います。
林冲は『水滸伝』において独立したストーリーが創作されている数少ないキャラクターの1人です。今回は林冲の性格が三国志演義の張飛に似ている件をご紹介します。
妻思いの林冲
『水滸伝』を1度でも読んだことがある人で林冲について思い浮かぶことは、何と言っても妻思いです。林冲は108人の豪傑で、妻がいる数少ない人物でもあります。
妻の名前は分かりません。マンガやドラマでは綺麗な名前を適当に付けています。そんな林冲と妻に悲劇が訪れました。ある日、林冲の妻が不良に絡まれました。
林冲はすぐに助けに入って不良どもをボコボコにします。しかし、この不良のボスは太尉の高俅の養子の高衙内でした。
〝衙内〟というのは名前ではなく、〝坊ちゃん〟という意味です。
権力者の息子に手を出したので、林冲は罠にはめられて流刑にされました。
林冲豹変
林冲を罠にはめたのは、林冲の親友の陸謙でした。陸謙は出世のために、林冲を売ったのです。
陸謙はその後も、護送役人に林冲の殺害を頼みます。だが、魯智深が救出に入ったので失敗に終わります。魯智深は背中に立派な刺青をしていることから、花和尚と呼ばれています。
どうにか、魯智深のおかげで流刑地までたどり着けますが、陸謙は全く諦める気配がありません。今度は牢屋の責任者に金を握らせて林冲を殺そうと企みます。
牢屋の責任者は、林冲に軽い仕事をさせて様子をみました。半年後に、林冲は真面目に働いていることから、配置換えと言って別の場所に移動させます。陸謙と牢屋の責任者は、配置換えとなったその日に林冲のいる小屋に火をつけました。
ところが、運良く林冲はいなかったので、難を逃れました。この時、陸謙と牢屋の責任者が自分を殺そうとしていた話を耳にします。カッとなった林冲は、持っていた槍で彼らを殺してしまいます。
その後は、急に人が変わったように暴れ回って近くの農民に取り押さえられます。
優しい林冲はどこにいったことやら・・・・・・
林冲のモデルは三国志演義の張飛!
なんで林冲は性格が180度変わったのでしょうか。
実は林冲がモデルがいます。
それは三国志の桃園三兄弟でも有名な張飛です。
「デタラメだ!!」
「林冲と張飛はイメージが違うじゃないか!!」
読者の皆様も言いたいことは分かります。ですが、本当の話です。
林冲のモデルとなったのは、正史『三国志』ではなく、『三国志演義』の張飛です。
「よく分からないのだが・・・・・・」
これでもピンと来ない読者の皆様もいるでしょう。ヒントは林冲の豹子頭というあだ名です。
「だから、意味が分からんよ。早く言えよ!!」
読者の皆様がイライラしているので解説します。
実は『三国志演義』の序盤で張飛の姿を表現した記述に〝豹頭〟という記述が出ます。
そのまま「豹のような顔つき」という意味です。
林冲のあだ名の豹子頭は、先ほどの豹頭に〝子〟の字を付けただけです。
〝子〟はジュニアという意味があります。
要するに林冲は張飛ジュニアという意味です。
だから、専門家も林冲は張飛と変わりがなかったと見ているようです。
「でも、納得出来ない・・・・・・」
確かに、林冲は『水滸伝』の随一の酒好きキャラクターの李逵(りき)と違って、目立った描写がありません。後半になるにつれて、正確が張飛のようだったかも分からないのです。しかし、これが隠された事実です。
信じるも信じないもあなた次第。
宋代史ライター 晃の独り言
以上、林冲の性格に関してでした。実はもう1つの事実があります。
林冲=美形はありません。
これは、美人の妻と引き裂かれたことから、歌舞伎やドラマ、マンガが作った人物像です。昔の浮世絵を見れば、林冲は全然格好良くないです。
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