ルソーとモンテスキューは、18世紀のフランスの哲学者で、政治哲学や社会哲学において影響力のある思想家でした。2人ともフランス革命やアメリカ独立戦争に影響を与えましたが、2人の政治思想は、どこが同じでどこが違うのでしょうか?
自然状態について
モンテスキューは、政府が存在しない人間の自然状態を闘争が続く自己中心的な世界と考えていました。彼は人間の本能的な欲望を強調し、政府が権力を分散させ人間の欲望を適切に管理して、市民同士の闘争を阻止し、個人の自由を守るべきだと主張しました。逆にルソーは人間の自然状態を善良で平等なものと考え、そこに私有財産や階級が誕生した事で人間社会に奪い、奪われる闘争が生じたとします。両者は人間の自然状態について真逆のスタンスを取っています。
政府の形態
モンテスキューは、政府の分立と権力の均衡を強調し、立法、行政、司法の三権分立を提案しました。これにより三権にお互いを監視させ、権力の濫用を防ごうと考えるもので、イギリスの立憲主義の影響を受けています。一方、ルソーは代議制による間接民主制ではなく、「一般意志」の原則に基づく直接民主制を支持、国民の合意に基づく共同体を理想としました。ルソーの考えでは一般意志の原則に基づき、市民の信任を得た共同体なら、必ずしも三権分立でなくてもよい事になります。このためルソーの思想は、社会主義体制のような議会を置かない独裁的政治体制をも認めている形です。
社会契約論について
モンテスキューはルソーの社会的契約論を支持しましたが、直接民主制には否定的で人間の本能的な欲望を考慮し、政府による権力を分割した統治が必要だと主張しました。一方でルソーは、社会契約によって人々は自由と平等を守るために共同体を形成し、共同体政府が出す一般意志に従うべきだと考えました。
まとめ
モンテスキューは政府も市民も完全には信用せず、政府や市民の暴走を阻止する三権分立を重視しましたが、ルソーは市民の一般意志を重視し、三権分立よりも市民が直接選んだ共同政体を信頼しました。議会制や三権分立ではなく市民の「一般意志」を至上とするルソーの進歩思想は、その後、人間の理性を重視する社会主義者や共産主義者に広く受け入れられていきます。
▼こちらもどうぞ