2024年のNHK大河ドラマは平安時代を舞台にした「光る君へ」です。従来のNHK大河と言えば、戦国時代と幕末が交互に来る感じでしたが、今回は合戦シーンも黒船も来ない大河ドラマという事になります。そこで今回は「光る君へ」予備知識として、平安時代がどんな時代だったのかを解説しましょう。
国軍がいない平安時代
平安時代と現代の大きな違いといえば、平安時代には国軍がいないという事です。奈良時代まで朝廷には軍が存在しましたが、当時の国軍は庶民を無給で何年もこき使う劣悪なもので、農村の疲弊の原因にもなっていました。西暦792年、桓武天皇は一部を除いて国軍を廃止。代わりに地方の豪族や富裕者、位階を持つ人間の子弟を選抜し軍役につけるようになりました。これを健児の制と言いますが、簡単に言うと国防を民間に丸投げしたのが平安時代なのです。
武士は番犬扱い
戦国時代や幕末はサムライの時代ですが、平安時代の武士は政治的にはかなり無力です。朝廷は反乱が起きると恩賞や官位で釣って武士団を鎮圧に向かわせていましたが、同時に武力を持つ武士を警戒し、幾つかの武士団を競わせ、一つの武士団に恩賞や官位が集中しないようにしていました。やがて多くの武士団の中から伊勢平氏と河内源氏が台頭してきますが、ほとんどの武士が御所に昇る事も出来ず、玉砂利の上で土下座して褒美を受ける状態で貴族の番犬のような扱いでした。NHK大河ドラマ「光る君へ」でも武士が大活躍する場面は、おそらく描かれないでしょう。
タックスヘイブンの荘園が国力を蝕む
現代の日本では土地の私有が認められていますが、不動産にはしっかり税金が掛かっています。平安時代は建前上、すべての土地は天皇のモノでしたが、実際には自分で荒れ地を開墾した場合は土地を私有する事が認められるようになっていました。ここまでは良いのですが、大きな土地を私有したのは、寺院や貴族、富裕層が多かったので、彼等は朝廷に対して荘園を無税にするように働きかけて特権を獲得。さらに受領のような税金取り立て人が荘園に踏み込む事も禁止する特権も取得します。これを不輸・不入の権と言います。やがてこれらの荘園は本来国有地だった土地まで吸収してゆき、朝廷に納められる税金は急速に減少していきました。収入が激減した朝廷は日本の隅々まで権力を届かせる事が出来なくなり、日本は天皇ばかりでなく、大寺院や大貴族など複数の支配者が支配する権力分立社会になっていくのです。
リアル呪術廻戦だった平安時代
平安時代の人々はとても迷信深かったようです。当時は医学も発展していないので病気による突然死は呪いによるものと信じられ、人々は目に見えない呪いに恐れ慄くと同時に、自分たちも憎い相手に呪いをかけて追い落とそうと狂奔していました。呪いや呪い返しとして利用されたのは、呪符や藁人形がありましたが、恨む相手の姿を木彫りにして、病んで欲しい部分に釘を刺すなど、なかなか闇が深い呪物も見つかっています。その中で人々に頼りにされたのが安倍晴明のような陰陽師で依頼主の恨みに合わせて、様々な術を駆使していたようです。
死んだら荒野にポイ!驚きの埋葬法
現在では当たり前に行う墓参りですが、平安時代には毎年、墓参するような習慣はありませんでした。平安時代の人々は死を穢れとして忌み嫌い、貴族のような高い身分の人でも、葬儀までは盛大にやるものの埋葬してからは放置で、墓地はみるみる草木に覆われ見るも無残な状態になったそうです。庶民の場合には埋葬さえせず、特定の荒れ野に死体を置き去りにし野犬や鳥が死体を食べるに任せています。また、死を忌む習慣から、もう助からないと思われた人は穢れを気にして自宅から離し、生きている間に荒野に置き去りにしてしまう事さえありました。
まとめ
以上、平安時代の常識を幾つか紹介しました。これらの事を頭の片隅に入れておくと「光る君へ」が少し面白くなるかも知れませんよ。
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