2024年4月21日、クリミア半島のセバストリポリ軍港をウクライナ軍のミサイルが攻撃。ロシア海軍の潜水艦救難艦コムーナも被弾、大破したと報道されました。一見すると何の変哲もないニュースですが、このコムーナ、現役で活動している世界最古の軍艦だったのです。
ロシア帝国時代に建造されたコムーナ
潜水艦救難艦コムーナは、1913年、ロシア帝国のプチーロフ造船所で進水しました。当時の名前はヴォルホフです。当時は救難艦ではなく沈没した潜水艦を引き上げるサルベージ艦として設計されました。ヴォルホフはバルチック艦隊に所属し、第一次世界大戦に参戦。何隻かの潜水艦引き上げに従事した後、ロシア革命に遭遇します。その後ヴォルロフは帝政ロシアが倒れた後、内戦を制したソビエトにより1922年にコムーナ(コミューン)の名前を与えられ、ソビエト政府の軍艦として再スタートします。進水式の年をコムーナの誕生年とすると2024年で111歳であり、現役で就航している軍艦としては世界最古です。
111年間で150隻の艦船を救助
コムーナは、独ソ戦ではレニングラード包囲戦の全期間に従軍し、レニングラードの唯一の補給線である凍結したラドガ湖上で活動し、水没した戦車や車両を引き上げ、さらに潜水艦を引き上げて船上で修理するなどレニングラードの防衛に従事しました。そのため、コムーナ乗組員はレニングラードの包囲が解けた後に、レニングラード防衛記章が授けられています。独ソ戦終結後の冷戦下でもコムーナは活躍しますが、ソビエトの衰退に伴い、コムーナは整備もされず、長期間港に放置されていましたが、ロシア連邦の成立後に全面的な改修を経てサルベージ艦から潜水艦救難艦へ仕様が変更されます。111年間でコムーナが救助した艦船は150隻を超えるそうです。
コムーナの性能
コムーナはカタマラン(双胴船)を採用したロシア初の軍艦でレーヴェリを主な母港として潜水母艦として活動しました。コムーナには潜水艦の乗員60名を収容する能力があり、補給用の魚雷10本と燃料50トンの搭載能力を保有していました。第一次世界大戦時には、コムーナはロシア海軍の潜水艦ばかりでなく同盟国だったイギリス海軍のE級およびC級潜水艦にも支援をしていました。111年間の活動の中でコムーナの救助で命を救われた兵士は大勢いる事でしょう。
侵略戦争の中で勇名が汚れる
ロシア兵、ソビエト兵ばかりでなく、同盟国の兵士も救助した栄誉あるコムーナが、プーチン大統領が引き起こした侵略戦争の片棒を担ぎ、その勇名が汚れるのは哀しい限りです。最新の情報では、コムーナはミサイル攻撃を受けたものの、航行は可能との事ですが、111年を生きてきたコムーナはウクライナ戦争をどう思っているのでしょうか?
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