ウクライナ国防省情報総局の発表によると、8月3日、ウクライナ製ドローンがロシア南西部ロストフ州のモロゾフスク空軍基地を爆撃しSu-34戦闘爆撃機1機を撃破、同2機を損傷させ弾薬庫を破壊したようです。最近、長距離ドローンを使い、ロシア領内の航空基地を爆撃しているウクライナですが、その理由はどこにあるのでしょうか?
戦局を左右するロシアの滑空爆弾攻撃
ウクライナ軍は、ロシア軍の空からの攻撃を恐れていますが、その中でもウクライナ戦争の戦局を左右しかねないのがロシア軍の滑空爆弾です。ロシア軍の滑空爆弾は、ウクライナでは、「KAB」と呼ばれ、爆弾に展開式の翼をつけた単純なモノですが、翼のお陰で40キロメートルの射程を持ち、重さは最大で3トンもあります。射程が長いためにウクライナの防空装置の射程距離外から矢のような速さで目標に衝突し爆発します。その破壊力は甚大で、これまでロシア軍が戦車砲で数日かけないと破壊出来なかった建物を瞬時に破壊し、建物内にいた人々を地下に押し込めて救助を難しくしてしまうのです。ロシアは、この滑空爆弾をSu-34戦闘爆撃機に搭載し、一日に百発以上もウクライナの都市に投下していて、このままでは、ウクライナ領内から防御の為の建物が消滅するかも知れない状態です。
同盟国は長距離兵器をロシア領内で使用させない
そのため、ウクライナは早急にSu-34戦闘爆撃機が常駐するロシア領内の航空基地と滑空爆弾を攻撃し破壊する必要がありました。ゼレンスキー大統領が同盟諸国に、長距離対空兵器を求め、ロシア領内の攻撃を認めるよう求めたのも、この滑空爆弾の使用を阻止するためだったのです。しかし、アメリカをはじめとする同盟諸国は、ロシア領内への攻撃はロシアを刺激し、さらなる軍事攻撃に駆り立てるとして、未だに許可を出していません。
自国のドローンでSu-34戦闘爆撃機を叩く
この状態に業を煮やしたゼレンスキー大統領が採用したのは、ウクライナ国産のドローンを改良して長距離攻撃を可能にし、ロシア領内の航空基地を叩く事でした。8月3日のモロゾフスク空軍基地爆撃はウクライナの念願だったロシアの滑空爆弾攻撃を減らすという意味で決して小さい戦果ではなかったのです。
ロシアはSu-34戦闘爆撃機を分散配備
しかし、ウクライナの華々しい戦果は少々遅きに失したかも知れません。ロシアはウクライナ軍ドローンの航続距離を考えて、虎の子のSu-34戦闘爆撃機をロシア国内に数百キロも下げ分散して配備するようになったからです。今後、ウクライナ軍ドローンの航続距離が倍に伸びたとしても、ロシア内奥の航空基地まで防空迎撃システムをかいくぐっていけるかといえばかなり難しく、滑空爆撃の脅威は今後も継続する事になりそうです。
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