20世紀初頭まで、世界中を繋いでいたのは蒸気機関を動力とする乗り物でした。しかし、現在、蒸気機関は工場の動力としては活用されているものの、人や物を運ぶ輸送機関としての使命はほぼ終えています。それはどうしてなんでしょうか?
蒸気圧が高まるまで時間がかかる
蒸気機関が乗り物として廃れた理由としては蒸気圧が高まるのに時間が掛かる事があります。ガソリンエンジンならキーをまわしてすぐに起動できるものが、蒸気だと圧力が高まるまでに時間がかかるのです。しかし、自動車には向かないとしても、豪華客船のような出航までに時間がかかる乗り物には、蒸気機関が残っていても良さそうですよね?どうして残っていないのでしょうか?
一番の原因はボイラーの重さ
蒸気機関の乗り物が廃れた最大の要因は、蒸気機関のエンジンであるボイラーの重さでした。蒸気機関は熱した水蒸気を動力にしてタービンを回転させるので水蒸気を漏らさず、同時に桁外れの蒸気圧に耐えるボイラー室が必要です。しかし激しい蒸気圧に耐えるには、頑強で重いボイラー室が必要になり、ボイラー室の重さが蒸気機関の馬力を下げてしまうのです。
日本海海戦で活躍した帝国海軍の旗船三笠は排水量1万トンを超える蒸気軍艦ですが、ボイラーが極めて巨大であり、さながら走るボイラー室のようでした。こうして蒸気船が大型化すると、蒸気機関よりも小さな内燃機関で動かせる重油が動力の中心となり、蒸気機関は乗り物からは完全撤退していきました。
ボイラー室を軽く軽量化できれば蒸気の時代がくるかも
現在は自重を気にしなくていい、工場機械などで使用されている蒸気機関ですが、逆に言うと軽くて場所を取らない頑丈なボイラー室が技術革新で造れるようになれば、蒸気機関が重量のジレンマから解放され、再び、乗り物として活躍できる時が来るかもしれません。そんな架空のスチームパンクの時代を描いたアニメに大友克洋監督の映画「スチームボーイ」があります。機会があればご覧になって下さい。
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