ソクラテスとプラトンは共に古代ギリシャの哲学者であり、プラトンはソクラテスの弟子である事はよく知られています。しかし、そんな2人の思想にはどんな違いがあるかは、あまり知られていないのではないでしょうか?今回は、そんなソクラテスとプラトンの違いを解説します。
本を残したか否か?
ソクラテスとプラトンの第一の違いは、書籍を残したかどうかです。ソクラテスは人を論破する事に忙しく書物を残さず、その業績の大半は対話を通じてもたらされました。ソクラテスの思想はプラトンを含む弟子たちによって書き記され後世に伝わったのです。一方のプラトンは多くの哲学的著作を執筆し、自身の哲学を体系的に記録しました。彼の著作はソクラテスの問答の影響を受けた対話形式であり、主要な哲学的アイデアや思考実験が含まれています。
真善美のとらえ方
ソクラテスは知識の限界である「無知の知」を認識し、自己認識と道徳的な洞察を重視。驕り高ぶらず、事実に対し謙虚に注意深くあることで、人間は、より良く道徳的に生きる事が出来ると考え、個別の事例から人類に共通する普遍的な真理を導き出そうとしました。一方のプラトンはソクラテスの哲学を受け継ぎつつもイデア論を導入します。イデア論とは不完全で虚ろな現実世界に対し、完全で真実である世界を意味します。プラトンによれば現実世界は、このイデア世界の反映であり、人間が真実を追求し、善や美を求めるのもイデアの影響を受けていると考えました。そのため人間はイデアを完全に認識する事が出来ず、ひたすら謙虚に考えを巡らせる事により、不完全な現実社会を認識し、思想的な高みに到達できるとしています。つまり、ソクラテスが真善美を毎日の生活経験の中に見出そうとしたのに対し、プラトンは真善美を遥かな高みに置き、生涯を懸けて体得するものとしたのです。
政治について語るか否か
ソクラテスは主に個人の徳に焦点を当て、政治については詳細に語る事がありませんでした。彼は、自己認識と道徳的教育を重視し謙虚で注意深くある人が増えれば、人間の集合体である政治もまた上手く統治されると考えていたようです。一方のプラトンは政治哲学に深く関心を持ち、著作「国家」や「ポリティア」で同時代のアテネの政治腐敗を批判し、個人だけではなくポリス政治のあり方にも理想を求めるようになり、徳のある哲人が国を統治する哲人政治を標榜、軍人が国防を担い、市民が文化を担う分業国家を理想とし、ソクラテスの思想よりも規模が大きくなっています。
まとめ
このようにソクラテスとプラトンの違いは、著作を残したか否か?真善美を経験で体得できる素朴なものと捉えるか、長年の思惟によってようやく体得できると捉えるか?哲学を個人の徳に限定するか、人間の集合体である政治にまで拡大させるかの違いだと考えられます。
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