3月22日、ロシアの首都モスクワ近郊のコンサートホール「クロッカス・シティ・ホール」で迷彩服に身を包んだ武装集団による銃撃事件が発生しました。ロシアメディアは少なくとも62人が死亡し140人以上が負傷と報じました。今回の銃撃事件にはイスラム過激組織ISが犯行声明を出し、ロシア政府もテロ攻撃だと非難しています。現在、武装集団は逃走中との事です。
惨劇のコンサートホール
事件が起きたクロッカス・シティ・ホールの座席数は6200席あり、この日はロックバンドのコンサートが開かれる予定もあってチケットは完売していました。映像によるとコンサートホールでは二度の爆発が起きて黒煙が立ち上り、ホールの屋根が崩落したとの報道もあります。これらを総合するとコンサートホールでは、まず爆弾テロが起き、その混乱の中で武装集団による観客への無差別銃撃が起きたと考えられます。ロシア大統領府のペスコフ報道官は、プーチン大統領は、この銃撃事件に関する全ての情報を把握し必要な措置を取っているとコメントしました。
ウクライナは事件への関与を否定
今回の銃撃事件について、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は「テレグラム」にビデオを投稿し、ウクライナの事件への関与を否定し、ウクライナはロシア正規軍及びロシア連邦と全面戦争の状態にあり全てはテロではなく戦場で決定されると述べました。
どうしてISがモスクワを狙う?
今回の事件でイスラム過激派組織ISが犯行声明を出した事に意外さを感じた人も多かったのではないでしょうか?アメリカや欧州諸国に犯行声明を出すのではなく、どうしてロシアにISが銃撃事件を起こし犯行声明を出したのでしょうか?しかし実際にはロシアもイスラム武装組織と無関係ではありません。1991年のソビエト崩壊以後、イスラム教の影響力が強い中央アジアのチェチェン共和国の分離独立運動が発生した時、ロシアはこれを武力で鎮圧、二度に及ぶチェチェン紛争を起こしています。こうした経緯から、チェチェンのイスラム過激派は国外に逃れ、ロシア内外でのテロ活動を活発化させる中で、アルカイダのような国外の武装組織とも連携。2014年6月には、「コーカサス首長国」の有力司令官がISの最高指導者アブ・バクル・アル・バグダディ(当時)に忠誠を表明する形で、IS関連組織「コーカサス州」が設立されました。
まとめ
通信技術の急速な発達は20世紀以前には、お互いに顔を合わす事もなかった遠隔地に住む人々を緊密に結び付け、ダイナミックな人、モノ、カネ、文化の移動を可能にしました。それが戦争のようなハード面ではドローンと呼ばれる無人機による人間の殺傷や兵器の破壊を可能にし、ソフト面では共通の敵に対するイスラム過激派組織の世界的な連携を可能にしているのです。憎悪が憎悪を繋ぎイデオロギーがイデオロギーを繋ぐ、世界はここから、どこへ向かっていくのでしょうか?
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