お金と言えば金銭的な価値を持つアイテムです。しかし、広い世界には価値がゼロの紙幣も存在するのです。それがインドで流通しているゼロルピー紙幣です。では、どうして金銭的に無価値のゼロルピー紙幣が発行されているのでしょうか?
汚職を許さないゼロルピー紙幣
ゼロルピー紙幣はインドにおいて常態化している公務員の賄賂要求に対するカウンターとして発明されました。ゼロルピー紙幣はインドの非政府組織「5th Pilla」が2007年に発行した50ルピー紙幣を模倣した紙幣です。インドでは本来無償である公共サービスを受ける際に公務員が公然と賄賂を要求する事が常態化していて、ゼロルピー紙幣は、賄賂を拒否し汚職を許さないという意思表示で提示します。最初は25000枚刷られたゼロルピー紙幣ですが、現在では利用者が増加し、2014年には250万枚が流通しているそうです。
インドでは賄賂に毎年4600億円消える
2005年にトランスペアレンシー・インターナショナルがインドの20州、14000人にアンケートした調査によると、インドでは警察、学校、土地行政、司法で賄賂を要求されたと回答した人が多くいました。これらの賄賂は権力者の高額な賄賂ではありませんが、日常的に起きている汚職であり、少なくとも毎年、このような小さな賄賂に費やされている金額は総額4600億円に上るとされています。
効果があるゼロルピー紙幣
しかし、このゼロルピー紙幣には効果があるのでしょうか?ゼロルピー紙幣を出した時に公務員が怒ったりはしないのでしょうか?あるオート三輪者の運転手は、夜中に警官に止められ、気配りをしてくれるなら行ってもいいと言われたそうです。気配りとは賄賂を寄こせという意味ですが、運転手はゼロルピー紙幣を警官に渡しました。ゼロルピー紙幣を見た警官はショックを受けていましたが、微笑んで運転手を解放したそうです。出来過ぎた話のようですが、行動や態度で賄賂を拒否するのではなく、ゼロルピー紙幣を見せる事で、インドには賄賂を禁止する法律がある事を公務員に思い起こさせ、恥じる気持ちを呼び起こす事にゼロルピーは使えると言われています。
ゼロルピー紙幣は偽札にならない?
ゼロルピー紙幣は政府ではなく「5th Pilla」という非政府組織が発行しています。そのため、紙幣偽造の罪に問われないよう、表面だけを50ルピー紙幣に似せているものの、裏面には、これが「5th Pilla」が発行した者である事をきちんと明記しています。
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